靴下の跡が気になりませんか? 靴がきつくなってきていませんか?
足のむくみは、一過性の生理的な現象と、何かしらの病気のサインである場合があります。足のむくみのほとんどは誰にでも起きる一過性の生理的なむくみです。しかし、急にむくみが気になりだしたり、片足だけがむくんできたり痛みを伴う、数日間むくみが続くなどの場合には、何らかの病気が原因で起こっている可能性もあります。
あしのむくみが気になっている方、何か体の不調があるのか不安に感じておられる方、病院に行こうか迷っておられる方は引き続きこの記事をお読み下さい。

1、「むくみ」とは?

人の身体の60%は水分で出来ています。体中のあらゆる細胞の間にも水が存在し、血液で運ばれてきた酸素や栄養を細胞へ届ける役目を担っている重要な水分です。
この細胞の周りを埋めている水分の量は常に一定ではなく、血管から染み出したり、不要な分は静脈やリンパ管に吸収されて、一日を通してほぼ一定量を保つようになっています。
ただ、この水分調整の仕組みに何らかのトラブルが生じると、細胞の間を埋める水分の量が過剰になってしまうことがあり、これを「むくみ」と言います。医療用語では浮腫(ふしゅ)と呼びます。
細胞の周りを埋める水の量が多い、むくみの状態になると、細胞を押し広げるので足がパンパンに膨れる、まぶたが腫れぼったくなる、指が膨れて指輪が抜けなくなるといった状態になります。

むくみには、一過性のものと慢性のものがあります。
一過性の浮腫みに関しては、食事や運動、姿勢といった生活習慣が関わっていることが多いので、原因となっている生活習慣に気をつければ解消するむくみもありますが、治療が必要な病気が原因になっている場合もあるので、侮れません。

2、「足のむくみ」で病院に行くべき目安は?何科を受診すればいい?

足のむくみのほとんどは一過性のもので心配はいらないのですが、以下のような症状を伴う場合や、むくみの現れ方がある場合には、直ぐに治療を要する病気のサインである可能性が高いため、可能な限り早く医療機関にご相談されることをお薦め致します。

  • 片足が急にむくんできた
  • むくんでいる周辺が痛む
  • 息苦しさがある
  • 胸の辺りが痛む、苦しい
  • ここ数日で急にむくみが酷くなった
  • 1週間で体重が1.5~2kg以上増えた

上記のように、むくみが急に現れたり、その他の症状が一緒に現れる場合は要注意となります。
むくみは様々な病気のサインとして現れる為、先ずはかかりつけ医に相談されるのが良いかと思います。また、心臓の病気や高血圧症などをお持ちの方は循環器内科を。もし、かかりつけ医が無い場合には、全体的な評価をしてもらえる内科を受診されるのが良いかと思います。

3、「足のむくみ」の症状を伝える時のポイント

いざ医療機関を受診しても、自分の身に起きている症状を上手く言葉に出して説明できないこともありますよね。そんな時は、以下のような内容をおさえてメモをしておくのもお薦めです。

  1. 何時頃から症状を感じ始めたのか
  2. どんな時に起きるのか(時間帯など)
  3. 両足か片足か
  4. むくみ以外の症状があるのか(足の痛み、息切れ・息苦しさ、胸の痛みなど)
  5. 症状の変化について(変わらない、悪化している、改善したけどまだある)

例えば・・・・
(何時頃から)半年ほど前から
(どんな時に)夕方になるとむくむ
(両足か片足か)両足
(むくみ以外の症状)むくみが酷い時は、足が痛む
(症状の変化について)少しずつ悪くなっているような気がする。
このような内容をメモして、医師や看護師にお渡し下さい。

病院に行こうか迷っておられる方や、病院に行く前にどんな病気の可能性があるのか、また検査や治療方法について、ある程度知っておきたいという方は引き続き記事を読み進めて下さい。
ここからは、「足のむくみ」原因について、また「むくみ」症状があるときに行う検査や治療について順にお伝え致します。

4、一過性の「足のむくみ」の原因

一過性の「足のむくみ」は誰にでも起きうるものです。その原因を大きく分けると、①血流の停滞、②水分の過剰な蓄積、③血管の過剰な拡張に分けられます。心当たりがないかチェックしてみましょう。

①血流の低下・停滞

同じ姿勢で長時間過ごす

立ち仕事やデスクワークなど、長時間同じ姿勢の状態でいると、重力の影響も重なって血流の停滞が起きやすくなります。その結果、足の血液が心臓に戻りにくくなり、足の血管に留まりきれない水分が細胞間に染み出していきます。これが足のむくみに繋がります。夕方になる足がむくんできて靴がきつくなったり、靴下の跡がつきやすくなります。

運動不足

足は第二の心臓という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ふくらはぎの筋肉が収縮することで、血液を心臓の方へ押し上げる力が生まれます。これは牛の乳しぼりのようなので、ミルキングアクションと呼びます。
日中に歩く量が少ないと、ふくらはぎの筋肉を使う事が少なくなります。つまり、足の血流が低下・うっ滞しやすくなり、「足のむくみ」へと繋がります。

冷え

体が冷えると手足などの末端の血行不良が起きやすくなります。そのため血液やリンパの流れが滞ってしまい、「足のむくみ」につながります。

②水分貯留

塩分の摂り過ぎ

塩には水分を抱え込む性質があります。塩分の濃い食事を一度にたくさん摂ると、血液中の塩分濃度が高くなります。からだは血液中の塩分濃度を正常に戻すために、大量の水分も血管中に引き込まれることになります。ちなみに塩8gを一気に摂取すると、約1Lの水が引き込まれるとされています。このように血管が水分を大量に含んだ血液でパンパンになると、血管から細胞間へと水が漏れ出しやすくなり、「足のむくみ」につながります。

偏った過度なダイエット

食事量を極端に減らすようなダイエットでは、タンパク質が不足しやすくなります。タンパク質は筋肉の基になるだけではなく、血液中では血管の中に水分をとどめる働きがあります。栄養不足により蛋白質不足(低タンパク、低アルブミン血症)に陥ると、血液中に水分を保つことが出来ず、血管から細胞間へと水分が漏れ出してしまいます。また、筋肉量が少なくなったり、エネルギー代謝が小さくなることで手足の冷えなども起きやすくなります。

③血管の広がり過ぎ

飲酒

アルコールは血管を広げる作用(血管拡張作用)があります。血管が広がると血流がよくなるので良いことのように感じますが、過剰に血管が広がると血管細胞同士の間が広がり水分が漏れ出しやすい状況になります。
また、アルコールと一緒に味の濃い(塩分の濃い)料理を食べる事も多いと思いますので、血管拡張と水分貯留の相乗効果により、血管から血管の外の細胞間に水分が漏れ出しやすくなり、「足のむくみ」につながります。
お酒を呑んだ翌朝に顔がむくんでいたことはありませんか?寝ている間は重力の影響がなくなり、顔への血流も多くなりやすい状況です。また寝ている間は、長時間同じ姿勢となることから顔のむくみがでやすくなります。
あさの顔の浮腫みが気になる方は、夕方以降の塩分やアルコール摂取を控えてみましょう。

女性ホルモン 

女性ホルモンには、血管拡張作用(血管を広げる作用)があります。月経周期により、女性ホルモンが多く分泌される時期には、からだがむくみやすくなります。
生理前諸侯群(PMS)の代表的な症状の一つで、生理開始の5日前頃から全身や顔のむくみが起こることがあります。

薬剤性

お薬の中には、体液(水分)の排泄を抑制する作用や、血管を拡張させる作用が含まれているものがあります。痛み止めやステロイド、降圧薬などがあります。これら薬剤性のむくみは、顔や手など全身に起きやすいとされています。ただ薬剤を使った全員に起きるものではありませんので、新しく使い始めたお薬がある場合に、からだのどこかに「むくみ」、特に喉のつまりや息苦しさが起きたら、速やかに医療機関にご相談下さい。

5、「足のむくみ」にひそむ病気

一過性のむくみの原因に当てはまらず、急激にむくんでくる、数日間むくみが続くような場合には病気のサインである可能性もありますので、早めに病院を受診しましょう。

心臓の病気

血液ポンプの働きをする心臓に問題があると、余分な水分を尿として排出させる働きも低下してしまいます。余分な水分を尿として排出できないと、血管の中に水分が大量にとどまることになり、血管から水分が血管の外の細胞間へ漏れ出しやすくなります。

腎臓の病気

腎臓は余分な水分を排出する働きを担っている臓器です。腎臓の働きが悪くなると、尿をうまく輩出できなくなり、血管の中に水分が留まります。血管が水分を大量に含んだ血液でパンパンになると、血管の細胞間が広がって水分が血管の外、細胞間へと漏れ出しやすくなります。心臓も腎臓も水分量を調整する重要な臓器です。心不全や腎不全の悪化は、からだのむくみ、「足のむくみ」に繋がります。

肝臓の病気

血中にはアルブミンというたんぱく質があり、血管に水分を取り込んだり排出したりしながら浸透圧を調整する役割を担っています。肝臓や腎臓に何らかの障害があると、このアルブミン量が低下し、血管での水分調整が効かなくなってしまい、「足のむくみ」の原因となります。

下肢静脈瘤

静脈は全身からの血液を心臓に返すための管です。
その静脈には一度心臓方向に向かった血液が逆流して、再び足に戻ることを防ぐための弁(静脈弁)がついています。その静脈弁が壊れて、逆流した血液が足に溜まってしまうと、静脈が膨れてパンパンになります。静脈は皮膚の表面にあるため、膨れた静脈が透けてみえやすくなります。また、静脈の一部が外側に膨れた静脈瘤というコブができることがあり、これを静脈瘤といいます。
静脈に血液がうっ滞すると、組織間に過剰に溜まった水分を静脈から回収する作用が不十分となり、足のむくみへとつながります。

深部静脈血栓症

長時間のバスや飛行機に乗ったり、手術後にベットで長期間安静にしているなど、同じ姿勢を取り続けることで血液がうっ滞しやすく、足の静脈に血栓ができることがあります。足の静脈に血栓ができると静脈が心臓に戻りにくくなり、静脈瘤と似た原理で足がむくんできます。

細菌感染

足の傷口などからバイ菌が入り込み、皮下組織に細菌感染がおきると炎症というからだの防衛機能が働きます。炎症した組織には水分が集まってくることや、血管が広がることなどから、炎症周囲に腫れやむくみが生じます。
感染によるむくみと単純なむくみとの違いは、赤身や熱感、痛みを伴う事です。

何かしらの病気のサインとして「足のむくみ」が現れている場合には、下記のような「むくみ+α」の症状が伴う事があります。

  • 片足が急にむくんできた
  • むくんでいる周辺が痛む、赤身や、熱感がある
  • 息苦しさがある
  • 胸の辺りが痛む、苦しい
  • ここ数日で急にむくみが酷くなった
  • 1週間で体重が1.5~2kg以上増えた

単なるむくみではないなと感じたら、早めに医療機関を受診される事をお薦めします。

6、「足のむくみ」の検査

問診

いつ、どんな状況で「足のむくみ」が現れたのか、急激な症状なのか徐々に悪化してきたものなのかなど、症状についての詳しい問診を行います。
また、塩分摂取やアルコール摂取状況、運動状況など生活習慣も大切な情報です。

薬剤の確認

薬の副作用としてむくみが生じることがありますので、薬剤のチェックを行います。

採血

心臓疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、栄養状態、甲状腺機能、血栓マーカー、細菌感染など、「足のむくみ」が何かしらの病気のサインである可能性を幅広く調べます。

血管エコー検査

超音波を使った画像検査で、痛みなどを伴わず静脈瘤や下肢静脈血栓症など、血流の低下やうっ滞を調べることが出来ます。

7、治療について

足のむくみの対処方法、治療方法についてですが、①今起きている浮腫みに対する対応、②原因を取り除くことに大別されます。むくみの原因が病気に関するものであれば、その病気の治療を行うことになります。ここでは、主に生活習慣で改善できるものをご紹介します。

①今起きている足のむくみへの対処方法

弾性ストッキングの使用

慢性的な足のむくみや、下肢静脈瘤の治療と進行予防においては、医療用弾性ストッキングの使用も手段の一つです。弾性ストッキングの最大の特徴は、足首の部分が最も圧迫圧が高く、上方にいくにしたがって圧迫圧が低くなるようになっています。
足首から膝に向かうにつれ段階的に圧迫することにより、足の静脈の血液が下から上に流れやすくなります。このような弾性ストッキングを日常的に使い続けることによって、下肢静脈瘤の原因となる足のむくみやだるさなどの症状改善効果が期待できます。
ドラッグストアでも購入することが出来ますので、足のむくみが気になる方は試してみてはいかがでしょうか。

スキンケア

むくみが慢性的にある場合には、皮膚が弱く傷つきやすくなっていることから、感染しやすい状態といえます。とくに皮膚の乾燥やひび割れは感染症につながりやすいため、保湿クリームの使用など、スキンケアが大切です。

マッサージ(リンパドレナージ)

足の方から膝に向かってふくらはぎのマッサージを行うことで、リンパの流れを改善させます。強くもむとリンパがつぶれるので、マッサージオイルなどを使って「下から上に流す」ようにします。
静脈系の流れを良くするには、少しもみほぐすようなことも効果が期待できます。

②足のむくみの原因を取り除く

塩分を控える

外食やレトルト食品、加工食品には塩分が多く含まれているものを控えます。

カリウムを摂る

カリウムは塩分の排出を促進します。野菜や果物などの摂取が少なめの方は、普段よりも少し多めに摂取するようにします。※ただし、腎臓病がある場合には、カリウム制限が必要な方もいらっしゃいますので、医師にご相談下さい。

運動

長時間同じ姿勢をとると、足がむくみやすくなります。デスクワークであれば休憩時間に少し歩いてみるなど足に溜まった水分を心臓へ戻していきましょう。
また、適度なウォーキングなどふくらはぎの筋肉を使うような運動を心がけて、足の血管機能や血流を改善させることも大切です。
立ち仕事の方は、休憩の際に足を上げたり、ふくらはぎのマッサージを行う、また弾性ストッキングを使用するのも手段の一つです。

深部静脈血栓症

足の静脈に血栓ができている場合には、血栓を溶かす治療、また血栓が出来ないようにするお薬の投与が行われます。血栓が流れて肺の血管で詰まってしまうと、重篤な状況になるため、場合によっては入院治療が必要なケースもあります。

下肢静脈瘤

まずは弾性ストッキングを使用し、病態や症状の悪化を予防します。
症状が悪化する場合には、静脈を切除し取り除く手術(ストリッピング手術)、静脈瘤が進行しないように薬剤を注入して固めてしまう(硬化療法)などの治療方法があります。

最後に
ここまで読んでいただきありがとうございました。
足のむくみの原因として多くは生活習慣によるものですが、一部、循環器疾患、血管疾患、内科系疾患がかくれていることがあります。
特に、ここ数日~数週間で「足のむくみ」を自覚するようになり不安に感じておられる方、どうしたらいいか迷っておられる方は、一度お近くの医療機関にご相談いただくのも解決手段の一つだと思います。
大阪天王寺、上本町近辺でしたら夕陽ヶ丘ながいクリニックにご相談ください。