狭心症とは

心臓は1分間に約60回。1日にして約10万回、体中の臓器に血液を送るために生涯休みなく働きます。この心臓が働き続けるための血液を供給している血管を「冠動脈:かんどうみゃく」と言います。

この冠動脈の内側が何らかの原因で狭くなると、血液の通り道が狭くなります。
血管の狭窄が進行して、心臓が正常に動き続けるための血液量を満たせなくなると、心臓から発するSOS信号として、胸の痛みや、胸の圧迫感などを感じるようになります。

これが狭心症(きょうしんしょう)です。

狭心症の「狭い」というのは、心臓そのものが狭くなるのではなくて、心臓を栄養する血管が狭くなることを表しています。



心臓を栄養する血管(冠動脈)が狭くなり、心臓が血流不足に陥ることで、胸の痛みや圧迫感といった心臓の症状がでてくる病気が狭心症です。

狭心症を疑う症状

狭心症は、より重症な心筋梗塞につながる恐れのあるものも含まれますので、狭心症を疑う症状があれば早めに医療機関を受診されることをお勧めします。
以下の様な症状を自覚された場合は、大阪天王寺区近辺でしたら、心臓の病気を専門とする夕陽ヶ丘ながいクリニックへご相談下さい。

狭心症の症状は、①場所と症状、②範囲、③持続時間に特徴があります。

①狭心症の症状が出る場所と症状

◆胸の痛み

◆胸の圧迫感(押さえられる様な感覚)

◆胸のしめつけ感

◆胸が焼けるような感覚

◆運動すると胸が苦しくなる

◆食事に関係ない胃もたれや胸やけ

◆少し動いただけで息切れするようになった

◆胸の違和感に加えて、肩や腕のだるさや痛み、歯が痛む

◆吐き気や、嘔吐

◆冷汗

◆動悸(ドキドキ、ばくばく)

狭心症の初期症状としては上記の様なものが上げられますが、程度(症状のきつさ)については軽いものから強いものまで様々です。症状の強さに関わらず、初めて狭心症っぽい症状を自覚された場合には一度医療機関にご相談されることをおすすめします。

②狭心症症状の範囲

特に胸周辺の痛みや圧迫感、不快感といった症状は、「なんとなくこの辺」といった感じで漠然とした範囲のことが多く、反対に指で指せるような狭い範囲である場合には狭心症ではないことが、臨床上よく経験することです。

③狭心症症状の持続時間

比較的安定した狭心症の場合は、症状の持続時間は数分~10分程度です。
また、歩いたり階段をのぼったときなど運動した時に現れる狭心症発作は、止まって休めば徐々に治まってきます。

数秒間だけだったり、反対に何時間も何日も持続するような場合は、狭心症である可能性は高くありません。


より危険な狭心症の症状

◆5分・・・10分と時間が経つごとに症状が悪化する

◆10分以上安静にしていても症状が改善しない

◆狭心症の出現頻度が急に増えた

◆以前に比べて胸の症状が強くなってきた

◆冷汗やめまい、嘔吐を伴うもの

このほかにも、迷ってしまうような症状の場合も、ご自身で判断せずに医療機関にご相談下さい。

狭心症を疑った時の検査

狭心症っぽい症状だなとなった後は、狭心症を診断するための検査を行います。
狭心症を含めて心臓関連の検査としては、心電図検査、採血、心臓超音波検査、心臓CT、心筋シンチグラフィ、心臓MRI、心臓カテーテル検査などがあります。

心電図検査

心電図検査は、心臓の電気的な活動をみる検査です。
冠動脈の狭窄により心臓が酸欠状態になると、心臓を流れる電気活動にも異常が現れます。
こちらに2つの心電図をお示しします。


心臓の酸欠は、心電図波形のSTという部分に現れ、ST部分が正常よりも下がってしまいます。
安静時には心電図変化を認めないこともあるので、あえて心臓に負荷をかけたときの反応を見るために運動負荷心電図検査を行うこともあります。

採血(血液検査)

採血では、このデータ異常があれば狭心症と判断できるような、狭心症に特有の採血データはありません。

では何を見ているかというと、狭心症よりも危険度の高い心筋梗塞を除外するためであったり、
動悸や息切れが心臓以外の臓器の問題である可能性を除外するために採血を行います。

例えば貧血があると、疲れやすくなったり、少し動くだけでも息切れや動悸といった狭心症と似たような症状が現れることもあります。
狭心症以外の病気が無いと判断できれば、より狭心症っぽいなということになります。

心臓超音波検査(心エコー検査)

心臓超音波検査は、心臓の筋肉の動きや、心臓の弁の動き、心臓の中を流れる血液の流れをみることができます。

この検査も採血と同じように、狭心症特有の所見をみつけるというよりは、弁膜症や心筋症など、狭心症の症状を引き起こすような心臓組織の異常がないかを見つけるために行われます。

心電図検査、採血などで狭心症をより強く疑った場合に、次に行う検査としては心臓CT検査となります。

心臓CT検査

CT検査は、胸のレントゲン撮影と同じように放射線を用いた画像検査で、冠動脈の走行、血管の狭窄を評価することができます。造影剤を注射したうえでCT撮影を行うと、造影剤が流れている部分の冠動脈が画像上に浮かびあがってきます。

造影剤を使って冠動脈を浮かび上がらせるのは、心臓カテーテル検査と同じですが、体への負担も医療費負担も少ない検査です。

心臓カテーテル検査

最終的に狭心症、つまり冠動脈の狭窄の有無を見極めるには、心臓カテーテル検査が必要になります。

心臓カテーテル検査は放射線を使った画像検査で、脚の付け根の血管等からカテーテルを挿入。X線撮影を行いながら冠動脈に造影剤を流すと写真のように血流があるところは造影剤を反映して黒く映ります。反対に、血管が狭窄している部分は造影剤が流れないために血管が途切れたようにみえます。

冠動脈の狭窄部位を確実に見つけられる検査ではありますが、入院が必要など全ての検査の中で最も患者負担も医療費も大きい検査となりますので、狭心症を疑った方全員に行う検査ではありません。

狭心症の治療

症状や各種検査で狭心症と診断したら治療を開始します。
狭心症の重症度や緊急性を判断し、以下の方法から治療を選択していきます。

◆内服薬での治療

狭心症の治療薬として用いられる種類としては以下の様なものがあります。

①狭心症発作時の症状を鎮めるお薬
狭くなった冠動脈を広げる薬を使用することで、心臓細胞への血流が改善し症状が消失します

②血栓を予防するくお薬
狭心症では動脈硬化が進行しており、血栓が作られやすい状況になっていたり、心筋梗塞という大きな血栓が完全に冠動脈を詰まらせてしまう病気に発展することも考えられます。
そのため、血を固まりにくくするお薬が使用されます

③狭心症の悪化を防ぐためのお薬
狭心症の悪化を予防するためには、生活習慣の改善を図り、動脈硬化の進展を防止することが必要です
しかし、運動や食事で改善出来ない部分については、内服薬を併用します。
糖尿病、高血圧、脂質異常症など生活習慣病を改善するお薬が使用されます。

◆生活習慣の改善

運動不足、喫煙、肥満、偏食や過食などの生活習慣の乱れは糖尿病や高血圧症などの生活習慣病を進行させやすくします。

生活習慣病は、狭心症の原因となる動脈硬化を引き起こす引き金ですので、お薬を飲むことで、これらの悪影響が無かったことにはなりませんので、内服薬に加えて、問題となっている生活習慣を見直すことがとても大切です。

運動療法

運動は薬だといわれますが、狭心症など心臓疾患を持つ方にとっては、やらないメリットが無いと言えるくらい効果の期待できる治療方法です。

適切な運動の継続は、血管機能の改善、狭心症症状の軽減などの効果が認められており、安定した狭心症の場合には後に示します心臓カテーテル治療と同等の治療効果が期待できるものとされています。

ウォーキングなど全身運動を1回あたり30分程度、無理なく会話できる程度の楽なキツさで効果が期待できます。運動は血管や筋肉、自律神経系など体中の様々な器官にいい影響を及ぼします。これはどんな薬にも出来ないことです。

心臓カテーテル治療

4つ目が心臓カテーテル治療です。
脚の付け根や腕の動脈から、カテーテルと呼ばれる金属のワイヤーを通して、狭くなっている冠動脈を直接治療する方法です。

下の図で黒く映っているのが冠動脈で、黄色のまるで囲った部分で一部血管が細くなっているのがわかるかと思います。



カテーテルで狭くなた血管を押し拡げると右の図のように黒い部分が大きくなり、血管が広がった事が見て取れます。

こんな手っ取り早い方法があるなら初めからと思うかもしれませんが、カテーテル治療にも危険性は伴います。
また狭心症の原因である動脈硬化そのものをなくすわけではありませんので、治療後も、適切な内服治療や運動療法を始めとした生活習慣の改善が求められます。

冠動脈バイパス術(外科手術)

最後に冠動脈バイパス術という手術です。2012年に上皇陛下がお受けになられた手術として有名になりました。

全身麻酔を行い、胸を開いて血管をつなぐ手術となります。
人工心肺装置や人工呼吸器など大掛かりな装置も使用し、2時間から4時間程度の手術となります。
術後はリハビリなども含めて2週間程度の入院期間を経て退院となります。

狭窄した冠動脈の場所によっては、心臓カテーテル治療よりも冠動脈バイパス手術の方が有効であることもあります。

狭心症の原因(動脈硬化)

血管の内側が狭くなってしまう原因の多くは動脈硬化(どうみゃくこうか)です。

血管の壁に血液中に存在する脂質の一種であるコレステロールなどが入り込み、こぶのように盛り上がります。
コレステロールの瘤と言ってもイメージがつかないと思いますが、顔にできるニキビと同じような物とお考え下さい。

ニキビもあぶらなどが皮膚の下に溜まって、コブをつくりますよね。
これと同じようなことが血管の内側で起こっているとお考え下さい。



血管の場合、このこぶが大きくなると血管の内側に張り出してくるため、血流が障害され、心臓の筋肉に十分な血液を運べなくなります。

このように血管の壁にコレステロールなどが溜まって、血液を通すという機能が損なわれた血管の状態を動脈硬化と呼びます。

動脈硬化は全身の血管のどこにでも生じます

心臓の血管(冠動脈)で起これば狭心症。
脳の血管で起これば脳梗塞になります。
脚の血管で起きると、下肢閉塞性動脈疾患となります。
このように動脈硬化は全身病といってもいいと思います

動脈硬化を進めるもの

血流障害を起こす動脈硬化は、加齢により誰でも進んでいきます。いわば血管の老朽化です。

しかし年齢以外にも、運動不足や喫煙習慣、食生活の乱れが続くことによって、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満といった生活習慣病を患うようになると、この動脈硬化の進展速度を速めてしまうことがわかっています。



一旦進行してしまった動脈硬化を直接治す薬はありません。動脈硬化による悪影響を最小限にするための対処療法的なお薬、動脈硬化をこれ以上進行させないようにするための悪化予防として様々な内服薬が存在します。

狭心症の再発予防と心臓リハビリ

狭心症の治療では、狭くなった血管を血管をカテーテルで広げたり、バイパス手術で血流の回り道をつくったりすることで、心臓の緊急事態を回避します。しかしこれらの治療は、狭心症の原因である動脈硬化そのものを解消したわけではありません。動脈硬化にいたる要因を管理しなければ、また別の場所で狭心症が生じてしまいます。

そこで動脈硬化を引き起こす生活習慣の改善、血の塊ができないようにするためのお薬の内服、適度な運動といった患者さんご自身の力も非常に重要なポイントととなってきます。
これらのポイントを全て網羅できるシステムが心臓リハビリテーションです。

心臓リハビリテーションに参加することで、通常の治療のみの場合に比べて、心臓関連死を減少させるだけでなく、あらゆる死亡率をも軽減させる効果が期待できます。

狭心症に対する心臓カテーテル治療後の治療ガイドラインにおいても、心臓リハビリテーション実施の推奨度は最高ランクに位置付けられています。

夕陽ヶ丘ながいクリニックでは、狭心症の治療(心臓カテーテル治療や心臓バイパス術)を受けられた方の、長期的な医療管理のご相談を受け付けておりますので、大阪天王寺・上本町近辺の方で何かお困りのことがございましたらご相談下さい。