「貧血:ひんけつ」は、血液中の赤血球や赤血球のなかのヘモグロビンという色素が少なくなってしまった状態をいいます。

貧血には、単なる栄養不足の問題から、種々のガン(血液ガン、胃ガン・大腸ガンなど)といった命に関わる病気が隠れているケースもあります。

健康診断で貧血と言われたことがある、貧血の症状があって病院に行こうか迷っている方は続きをご覧下さい。

一般的な貧血の症状

・貧血を疑うような症状には以下の様なものがあげられます。
・動悸(ドキドキ、バクバク)
・安静にしていても脈拍数が多い(毎分100拍近く)
・少し動いただけで息が上がる
・常にだるい
・疲れやすい、疲労がとれない
・めまい
・頭痛
・爪や瞼(まぶた)の裏が白くなる
・無性に氷が食べたくなる

病院に行くべき貧血症状

重度の貧血には、血液ガン・胃ガン・大腸ガンといった重い病気による出血も考えられます。
また、貧血が長期間にわたると心臓にも負担がかかり、心不全に至る恐れもあります(心不全で治療中の方は、病態の悪化につながります)

下記の様な症状であれば、重症の貧血もしくは貧血をきたす重大な病気が隠れている可能性がありますので、早めに医療機関を受診されることをお勧めします。

・動悸がひどい
・歩いただけで息が上がる、息苦しい
・便に血が混ざっている
・尿に血が混ざっている
・経血量が多い

貧血は何科?

健康診断などで貧血を指摘された場合には、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。
かかりつけ医がない場合や、どこに行けばいいか迷った場合には、医療のゲートキーパーである内科にご相談下さい。

以下に、自覚症状と診療科の目安をお示ししますのでご参考下さい。

・動悸や息切れ、とれない疲労感  ・・・ 内科
・下血や血便がある場合 ・・・ 消化器内科
・月経不順がある場合 ・・・ 婦人科
・血尿がある場合 ・・・ 内科・腎臓内科・泌尿器科

貧血とは

貧血とは、簡単に言うと血液が薄くなってしまった状態のことです。全身の臓器に酸素を供給する役割をになう、血液中の赤血球の数や、その中に含まれるヘモグロビン(血色素)の量が減少すると血液が薄くなります。

血液検査で測定するヘモグロビンの値が、概ね男性では13.0g/dl、女性では12.0g/dl以下になると貧血と診断されます。

血液の働きと貧血

からだ中の細胞は、血液に乗って送られてくる酸素を利用してエネルギーを作り出し、生命活動を維持しています。

その酸素を運んでいるのが赤血球ですが、もう少しくみていくと、赤血球の中にヘモグロビンという鉄が存在しており、その鉄の分子と酸素が結合して全身に運ばれていきます。


つまり赤血球や鉄が不足してしまうと、酸素の「運び屋」が少なくなるので、からだが酸素不足の状態、いわゆる貧血となります。

貧血の種類

◆鉄欠乏性貧血
貧血の中では最も多く見られます。血液の原料である鉄分が不足することが原因です。鉄分の不足した偏った食生活を続けることや、胃潰瘍や胃がん、大腸がんなどの消化管出血が原因のこともあります。鉄欠乏性貧血は、圧倒的に女性に多いとされていますが、極端なダイエットや生理が原因です。
以下に、鉄欠乏をきたす病気の例を挙げます。

(胃潰瘍)
胃潰瘍とは、胃酸などによって胃の粘膜がダメージを受けたり、一部が欠けたりする病気です。病状が進行すると出血が起こって、吐血・下血することがあり、それにともなって貧血が引き起こされる場合があります。


(十二指腸潰瘍)
十二指腸潰瘍とは、胃酸などによって十二指腸の粘膜がダメージを受けたり、一部が欠けたりする病気です。胃潰瘍同様、病状が進行すると出血が起こって、吐血・下血が出ることがあり、それにともなって貧血が引き起こされる場合があります。


(胃がん)
貧血は、胃がんでよくみられる症状です。初期にはほとんど症状が現れませんが、胃がんが進行すると吐血や下血が起こり、それにともなって貧血が生じます。


(大腸がん)
初期にはほとんど症状は現れませんが、大腸がんが進行すると、慢性的な出血により貧血が起こる場合があります。そのほか、腸が狭くなって便秘や下痢が起こることもあります。


(子宮筋腫
子宮にできる良性の腫瘍です。初期にはほとんど症状が現れませんが、筋腫が大きくなると生理痛がひどくなり、経血の増加や期間の長期化が続けば貧血が起きます。頻尿、排尿や排便時の痛み、腰痛などの症状が見られることもあります。



◆腎性貧血
血液中の老廃物を濾過して尿として出す「腎臓」という重要な臓器があります。この腎臓は、尿を作るだけではなく、さまざまなホルモンを分泌しており、その一つに赤血球をつくる働きを促進する「エリスロポエチン」というホルモンがあります。腎臓が弱ってきて働きが低下すると、このエリスロポエチンの分泌も減り、赤血球を作る能力が低下して貧血になります。

腎性貧血の症状は倦怠感、動悸・息切れ、めまいなどが一般的ですが、徐々に進行するために体が貧血の状態に慣れてしまってあまり症状を感じないこともあります。ただし、症状を感じていなくても、貧血をカバーするために心臓をはじめとした様々な臓器に負担がかかっていますので、治療を始めることが推奨されています。


◆悪性貧血
ビタミンB12の欠乏により生じる貧血で、巨赤芽球性貧血の一種です。胃の切除や胃潰瘍などにより胃からビタミンB12の吸収が障害されることで起こります。


◆再生不良性貧血
骨髄に存在する造血幹細胞の減少に伴い、赤血球だけではなく、白血球、血小板など血液細胞のすべてが減少する病気です。再生不良性貧血の原因は、原因不明のものから、薬剤、化学物質、放射線、妊娠などが挙げられます。

◆溶血性貧血
赤血球は産生と破壊を繰り返して新陳代謝をしていますが、赤血球の破壊がすすんでしまうことで起こる貧血です。原因は、過度な運動、遺伝性球状赤血球症、サラセミア、自己免疫性溶血性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症などが挙げられます。


貧血の診断までの流れ

貧血の診断は①貧血があるかどうか、②貧血の原因の2段階あります。
①まず貧血があるかどうかは、血液検査で測定するヘモグロビンの値が基準値以下になると貧血と診断されます
(男女で基準値が異なりますが概ね男性では13.0g/dl、女性では12.0g/dl以下)

②次は貧血を起こす原因を調べます(貧血の原因は多彩で、原因によって治療方法も異なります)

貧血の検査(血液検査)

血清鉄(Fe)
血清とは、血液の中の液体成分のことです。
血清鉄は、その液体成分である血清中に含まれる鉄分になります。
貧血では必ず血清鉄が低下するということではなく、原因によっては増加することもあります。

血清鉄が低下している場合は、鉄欠乏性貧血が一番多いですが、貯蔵鉄の利用障害(炎症性貧血)や消耗性疾患(悪性腫瘍など)、赤血球増加症などがあります。

血清鉄が増加している場合は、鉄利用障害(再生不良性貧血)や鉄過剰状態(ヘモクロマトーシスや悪性貧血)などが考えられます。


血清フェリチン値
体内の貯蔵鉄の量を示しており、鉄の貯金とお考え下さい。体内の鉄が不足すると、この貯金を切り崩して体に必要な鉄を補おうとします。主に鉄欠乏性の貧血で低値になります。


不飽和鉄結合能(UIBC)
血清中の鉄は、すべてトランスフェリンと呼ばれる血清蛋白とくっついて存在しています。UIBCは、トランスフェリンと結合していない鉄の量を意味しています。鉄を欲している状態かどうかがわかる指標になります。

網赤血球数
網赤血球とは若い赤血球のことで、骨髄で血液を作る作用をみており、骨髄での造血機能が弱くなると減少します。網赤血球数が少ない貧血状態なら造血機能の異常を疑い、多い状態なら慢性出血や溶血の可能性が疑われます。

葉酸・ビタミンB12
葉酸やビタミンB12は、赤血球を造るときに必要なビタミンで、不足してしまうと異常な赤血球(巨赤芽球)が作られます。
他の採血項目で大球性貧血が認められる場合に、巨赤芽球性貧血を疑います。

ビタミンB12の吸収には胃の働きが重要です。例えば、胃を切除した後や萎縮性胃炎があると、ビタミンB12をうまく吸収できなくなってしまいます。このような貧血を悪性貧血といいます。


赤血球数(RBC)
赤血球は、ヘモグロビンを入れておく財布のようなものです。赤血球数が正常なのに貧血の場合は、お財布はあるのに中にお金が入っていない、つまり鉄欠乏性貧血の可能性が考えられます。


ヘマトクリット(Ht)
血液全体に対する血球成分の体積が占める割合を示しています。その血球成分の95%程度は赤血球であるため、血液内の赤血球の割合を示す数値と見ることができます。


平均赤血球容積(MCV)
貧血の原因を考えるときに重要な指標です。低値なら鉄欠乏などの小球性や低色素性の貧血、高値ならビタミンB12や葉酸不足などで見られる巨赤芽球性貧血が考えられます。


クレアチニン、尿素窒素
腎臓の機能を見る検査です。腎不全があると、赤血球を作る際に必要になるエリスロポエチンというホルモンの分泌量が低下し、貧血の一因となります。


貧血の検査(その他)

胃カメラ
胃の不調がある方(当院では行えませんので、医療機関をご紹介させていただきます)


大腸カメラ
血便または、検便にて便潜血に異常が認められた方(当院では行えませんので、医療機関をご紹介させていただきます)

婦人科での超音波検査
月経異常などがある場合(当院では行えませんので、医療機関をご紹介させていただきます)

当院の貧血の治療

以下に、貧血の原因として最も一般的な「鉄欠乏性貧血」の治療についてご説明致します。
治療方法は主には、①原因治療、 ②食事療法、 ③内服治療 の3つに分けられます。

①原因治療
出血など鉄を失う病気が存在する場合には、原因となっている病気の治療を行いつつ、必要な鉄剤の補充など内服治療を併用します。


②食事療法
もし、ダイエットなどにより栄養バランスの偏った食事制限を行っている場合には、健康的なダイエットを達成するためにも、食事内容の見直しが大切です。

鉄分の多い食事を心がけましょう。多く含む食品として、レバー・赤身の肉・しらす干し、しじみ、大豆、ほうれん草、のり、ひじきなどがあげられます。
また、鉄分の吸収を良くしてくれる食品として、ビタミンCを多く含む果物や野菜を一緒に摂ることがすすめられます。

③内服治療
お薬として鉄剤の補充を行いますが、吐き気や食欲低下といった症状が現れる方がいらっしゃいますので、最初はできるだけ少量で始めるようにして、定期的に経過診察をさせて頂きます。

貧血の治療は数ヶ月単位で

通常、鉄剤の服用から1~2カ月でヘモグロビンは改善されますが、フェリチン(貯蔵鉄)が正常化するまでは数カ月間程度は服用を続けることが大切です。

原因により貧血治療は長期に及ぶこともあるのですが、症状が改善したからと治療をやめてしまわれる方もいらっしゃいます。中途半端で治療を終了してしまうと、また貧血になってしまうことも考えられますので、夕陽ヶ丘ながいクリニックでは、まずしっかりと治療内容をお伝えしながら診療をすすめていきます。

貧血にお悩みの方で、大阪天王寺、上本町近辺でしたら夕陽ヶ丘ながいクリニックへご相談下さい。