「たいして動いてないのに最近すぐに息が上がる」、「買い物に行くのにもしんどくなってきた」、「年のせいかな?」
など、動いた時の息切れや息苦しさ、疲れやすさが気になっている方、何か体に異常があるせいなのか不安に感じておられる方、どうしたらいいか迷っておられる方は、引き続きこの記事をお読み下さい。
目次
1、息苦しさ・息切れとは?
息苦しさ・息切れとは、呼吸が苦しいと感じる状態です。全力疾走した後に、息が「ハアハア、ゼエゼエ」した状態をイメージしてみて下さい。呼吸以外の事に集中できなくなるような状態で、「息苦しさ」や「呼吸困難」など同じ意味で使用されます。また、動いたときだけではなく、安静にしていても息苦しさを感じることがあります。
病院に来られた患者さんは、「息がしんどい」、「息が吸えない」、「空気が薄い」など様々な表現で訴えられます。
2、病院に行くべき目安は?何科を受診すればいい?
最近息をするのが辛い・苦しいと感じることがあったり、歩いただけで息切れしやすくなったなど、「病院に行った方がいいのか、どうしようか迷う」というのはよくありますよね。
ただ、特に以下のような症状を伴う場合には、重症な病気のサインである可能性が高いため、可能な限り早く医療機関にご相談されることをお薦め致します。
- チアノーゼ(唇が青紫色になる)を伴う
- 冷や汗や動悸を伴う
- 突然の息苦しさと共に、胸のあたりに痛みや重苦しさを感じる
- 安静にしても症状が改善しない
- 寝ている時に息が苦しくて目が覚める
- 寝ている時よりも、座っている時の方が呼吸が楽に感じる
- 2、3日の間に症状がだんだんと悪くなってくる
- 発熱を伴う
高齢の方や運動不足の方でしたら、「もう年だし仕方ないのかな」や「運動不足で体力がおちたせいかな」などと考えて、そのまま様子を見ているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。単なる運動不足や年齢によるものの場合、ここ数カ月で急に息切れが酷くなるといったことは考えにくいものです。
息切れや呼吸困難は様々な原因で起きますが、主には呼吸器疾患と循環器疾患が原因であることが多いと考えられます。近くに呼吸器科や循環器科が無い場合には、一般内科を先ず受診して医師に症状の相談をしてみましょう。
3、症状を伝える時のポイント
いざ医療機関を受診しても、自分の身に起きている症状を上手く言葉に出して説明できないこともありますよね。そんな時は、以下のような内容をおさえて事前にメモをしておくのもお薦めです。
- 何時頃から症状を感じ始めたのか
- どんな時に起きるのか
- どの程度なのか(強さや時間、頻度)
- 息切れ・息苦しさに加えて他の症状があるのか
- 症状の変化について(変わらない、悪化している、改善したけどまだある)
例えば・・・・
(いつ頃から)1年前から
(どんな時に)少し早歩きするとき
(程度や頻度)息をするのが苦しくなるので立ち止まって休むと治まる
(息切れ・息苦しさ以外の症状)胸のあたりが詰まる感じがする
(症状の変化について)少しずつ悪くなっているような気がする。ゴルフを歩いてまわれなくなった。
このような内容をメモして、医師や看護師にお渡し下さい。
4、息切れ・息苦しさの原因
息切れや息苦しさを引き起こすものとして、①呼吸器疾患(喘息、気胸、COPD、肺気腫、肺塞栓など)、②心臓疾患(心不全、狭心症、心筋梗塞、弁膜症、不整脈など)、③それ以外の疾患や精神的ストレスの可能性があります。
①呼吸器系の病気
喘息
アレルギー体質の方や、タバコなどにより気道に慢性的に炎症を起こしている方に起こりやすいと考えられます。また、もともと喘息をお持ちの方の場合、夜間や早朝、気温差が激しい時、風邪をひいたとき、空気の悪い場所にいた時などに、息切れや咳症状が強くなる傾向にあります。
肺炎、風邪
細菌やウイルスにより、肺や気管支に炎症が起きると、空気の通り道が狭くなたり、上手く呼吸が出来なかったりと、息切れや息苦しさの症状が現れます。呼吸症状に発熱を伴うこともあり、高齢者や基礎疾患があると重症化の可能性が高くなりますので、適切な診断と治療を受けることがすすめられます。
気胸
気胸は肺に穴があいて肺から空気が漏れ、タイヤのパンクのように肺がしぼむために、胸痛、咳や息切れなどが生じる病気です。気胸は、10歳台後半~30歳代に多く、やせて胸の薄い男性に多く発生するとされており、症状は前触れなく急に起こります。
空いた穴が自然に塞がる事も多く、軽症の場合は自宅で経過観察するだけで済むこともありますが、漏れた空気が胸腔の中にたまり続けると肺がさらにしぼみ、心臓を圧迫して血圧が下がり、心肺停止状態となることがあります。これは「緊張性気胸」といって命にかかわる重大な状態ですので、息苦しさや胸の痛みなどが悪化してくる場合にはいち早く医療機関を受診することが大切です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺気腫
肺気腫は、空気を交換する肺胞組織がつぶれてしまう病気で、主にタバコを始めとした有害物質が原因とされています。
COPDは、肺気腫と慢性気管支炎を合わせた病態のことで、こちらも主にたばこの煙や大気汚染物質などの有害物質を長期間吸い続けることで生じる呼吸器全体の炎症性疾患です。
COPDでは、空気の通り道である気管支が狭くなるために、呼吸がし辛く(特に息を吐きづらく)なります。十分に息を吐くことが出来ないと、息を吸うことも出来なくなり、浅くて速い呼吸になりやすいことから「息切れ・息苦しさ」につながります。
特に運動することで息切れ・息苦しさの症状が強く現れる傾向にあります。
また、肺気腫やCOPDでは、息切れと共に咳や痰なども症状として現れやすくなります。
COPDは息切れ症状だけではなく、心臓の負担も大きくなりますので、
肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)
足の静脈に出来た血栓(血の塊)が、血流にのって肺の血管でつまることで、胸痛や息切れ・息苦しさを生じる病気です。
「エコノミークラス症候群」という呼び名は、飛行機などの座席で長時間じっとしていて急に立ち上がったときなどに発生しやすいことに由来します。ただし飛行機だけでなく、同じ姿勢を長時間続けることが発生要因となりますので、どこでも起きうる病気です。
特徴的な症状は、突然の胸の痛み、呼吸困難や息切れ、咳や血痰です。重症の場合は、意識障害が起きるなど命に関わる急性疾患ですので、迷わず救急車を呼ぶなど早急な治療が望まれます。
心臓の病気
心不全
心臓の動きが悪くなり、血液を全身に送る働きが不十分になることで、息切れやむくみ、動悸といった症状が現れるのが心不全です。心不全は、弁膜症や心筋梗塞、高血圧症や糖尿病など、心臓そのものの病気以外にも様々な生活習慣病の行き着く先として存在します。心不全になると、軽い運動でも息切れが現れたり、重症化すると安静にしていても息苦しさが持続します。また、心不全に特徴的な呼吸症状として、夜間に息苦しさで目覚めて起き上がると少し呼吸が楽になるといった起坐呼吸(きざこきゅう)があります。起坐呼吸は心不全に特徴的な症状であり、かなり重症化した心不全で現れる症状であるため、速やかな治療が望まれる状況と言えます。
弁膜症
心臓には血液の逆流を防ぐための4つの弁が存在します。その弁の機能が悪くなると心臓に負担がかかり、結果として心不全状態となります。心不全と息切れとの関係性は前項をご参照ください。
その他(貧血、甲状腺機能亢進症、更年期障害、ストレスなど)
貧血
貧血は血液中で酸素を運搬するヘモグロビンの濃度が下がるものをいいます。酸素の運搬がうまくいかないので、軽い運動時にも息切れや動悸などの自覚症状が起こりやすくなります。原因としては鉄欠乏性貧血が多いですが、その他にも慢性腎臓病や腸管出血、婦人科系疾患、血液疾患など様々な病気が貧血を引き起こします。
バセドウ病
甲状腺ホルモンの過剰分泌により起こるバセドウ病は、甲状腺ホルモンの影響により代謝が亢進し、心拍数や呼吸数を増やします。また、心房細動という不整脈を合併することも知られており、動悸や息切れ症状で来院されたときにバセドウ病が発覚することもあります。バセドウ病は若年の女性に多く、動悸症状に加えて、体重が減ってくる、疲れやすい、大量の汗をかくなどの症状を伴うことがあります。
更年期障害
性ホルモン分泌量の低下が原因となる自律神経失調症に似た症候群のことです。 男女ともに40歳を過ぎた頃から見られる、様々な体調の不良や情緒不安定などの症状をまとめて更年期障害と呼びます。更年期障害のはっきりとした原因はわかっていませんが、性ホルモンの減少や自律神経系の異常が重なることで、息切れや動悸など様々な不調が現れるとされています。
ストレス
過度の緊張や強い不安に襲われると、呼吸中枢が刺激されて呼吸数が増えることなどから息切れ感を自覚します。以下のような特徴がある方では症状が現れやすいと考えられます。
ストレスを感じやすい人、
神経質な人、
几帳面な人、
睡眠不足の人、
喫煙の習慣がある人、
暴飲暴食しがちな人、
アルコールの過剰摂取をしている人など
5、息切れ・息苦しさの検査
問診
いつ、どんな状況で息切れや息苦しさが現れたのか、急激な症状なのか徐々に悪化してきたものなのかなど、症状についての詳しい問診を行います。
血圧測定、心拍数測定、呼吸数測定、経皮的酸素飽和度の測定
血圧や心拍数などの循環動態や、呼吸数、血中の酸素濃度を測定します。これらバイタルサインから緊急度を判断します。
聴診
胸の音から、心臓や肺の状態を確認します。正常な心臓では聞こえない「音」が聞こえる場合は、息切れの原因ともなる心臓弁膜症や心不全の可能性が高くなります。
胸部レントゲン撮影
胸部レントゲン撮影では、心臓の大きさ、肺の陰影の有無を確認し、心不全や肺気腫、気胸、肺炎、間質性肺炎など、心臓や肺の状態を確認します。
採血
血液成分は全身状態を把握するのに役立ちます。細菌感染による肺炎や、心臓疾患の可能性、血栓塞栓症、貧血や甲状腺機能の異常など、息切れの原因になる病気がないかを調べます。
心臓超音波検査
心臓の大きさや弁などの構造上の異常や、心臓の動きを詳しく調べる検査です。高齢者の息切れは、弁膜症やそれに伴う心不全が関係している場合も多いため、聴診や胸部レントゲン、採血などと併用して息切れの原因を探る手助けとなります。
以上のような身体的な検査で異常がない場合、ストレスや不安神経症など精神的な問題からくる動悸・息切れを考えます。
6、息切れ・息苦しさの治療
息切れや息苦しさの治療は、①今目の前の息切れに対する対処療法、②息切れの原因に対する治療に分けられます。
①今目の前の息切れに対する対処療法
安静&酸素投与
来院時に息切れが持続している場合には、まずは呼吸が楽な姿勢で安静にします。血中の酸素飽和度によっては酸素投与を行い、少しでも呼吸が楽にできるように努めます。
重度の呼吸困難感を訴えられている場合には、心臓もしくは呼吸器に重大な病態が存在する可能性が高く、クリニックレベルでは対応が難しいため救急医療の整った医療機関に救急搬送となります。
②息切れの原因に対する治療
各種検査にて、息切れの原因が特定できたら、その病態に応じた治療を行います。
気管支喘息
空気の通り道である気管支の問題であれば、気管支拡張薬や、炎症を抑える吸入ステロイド剤の投与と共に、禁煙に努めます。また、何かしらのアレルギー反応であれば、抗アレルギー薬の投与も行われます。
気胸
肺に穴が開く気胸では、自然閉塞し症状が軽減してくるものに関しては経過観察となりますが、呼吸症状が悪化するような場合には、ドレナージ(肺から漏れ出た空気を取り除く治療)や緊急手術が必要となります。
肺血栓塞栓症
基本的に入院治療となります。肺の血管に血の塊が詰まってしまう肺血栓塞栓症では、血栓塞栓の範囲により治療方法が異なりますが、血液を固まりにくくする薬剤や、血栓を溶かす薬剤の投与で状態の改善をはかります。また、きわめて重症な場合にはカテーテル治療や外科的に血栓を取り除く開胸手術が行われます。
心不全
心臓のポンプ機能が悪くなることで肺に水が溜まること(肺うっ血)による呼吸困難の場合も、基本的には入院治療となります。急性心不全治療では、利尿薬、血管拡張薬により、水浸しになっていた肺から水分を排出する治療が行われます。
それと同時に、またはある程度心不全状態が改善したら、心不全を起こした原因を調べます。心不全を引き起こす原因としては弁膜症や心筋梗塞、心筋症などの心臓の病気、肺血栓塞栓症など肺血管の問題、腎不全、高血圧など様々なものがあるので、全身を検査して原因をさぐり、それぞれに応じた治療がなされます。
貧血
貧血の多くは鉄欠乏性貧血であるため、鉄剤の投与で改善を図ります。また、腎不全に伴う貧血の場合は鉄剤の投与だけでは貧血の改善が見込めないため、エリスロポエチン製剤という赤血球を合成するホルモン製剤が処方されることもあります。
また、血液を失う病態として消化管出血があります。便潜血検査や、胃カメラ、大腸カメラなどを考慮する場合もあります。
最後に
ここまで読んでいただきありがとうございました。
息切れや息苦しさの原因として特に重篤なものとしては、呼吸器疾患や循環器疾患がかくれていることがあります
ここ数カ月で息切れを自覚するようになった、息切れ・息苦しい症状で困っていたり不安に感じておられる方、どうしたらいいか迷っておられる方は、一度お近くの医療機関にご相談いただくのも解決手段の一つだと思います。大阪天王寺、上本町近辺でしたら夕陽ケ丘ながいクリニックへご相談下さい。