心臓のある胸の辺りの症状は、場所が場所なだけに不安になります。
病院に行こうかどうしようか迷っておられる方は、引き続きこの記事をお読み下さい。

1、病院に行くべき目安は?

以下のような症状があれば、すぐに(夜間なら救急車を呼んで)医療機関に受診・相談されることをお薦め致します。

  • 胸や背中の突然の激痛
  • 胸からみぞおち辺りにかけての圧迫感、しめつけ感、痛み
  • 胸の症状に加えて、冷や汗、吐き気・嘔吐、息苦しさどを伴う
  • 意識を失いそうになる
  • 10分以上症状が持続する、徐々に悪化してくる

このうよな症状があった場合には、すぐに119番通報、または救急外来を受診してください。

また、上記のようにそこまで切迫した感じではないけれど、

  • 初めて感じる胸やみぞおちの不快感(痛み、圧迫感、しめつけ感)
  • 胸の症状が持続して気持ち悪い
  • 症状を自覚する頻度が増えてきた
  • 症状の持続時間が延びてきた

などがあれば、緊急事態一歩手前のサインかもしれませんので、早めに医療機関(循環器内科、内科)にご相談されることをお薦めします。
大阪、天王寺区であれば、内科・循環器内科を専門とする夕陽ケ丘ながいクリニックへご相談下さい。

2、症状を伝える時のポイント

いざ医療機関を受診しても、自分の身に起きている症状を上手く言葉に出して説明できないこともありますよね。そんな時は、以下のような内容をおさえてメモをしておくのもお薦めです。

  1. いつから?
  2. 何をしている時?
  3. どんな症状?
  4. 胸の症状以外には?
  5. 持続時間は?
  6. 症状を自覚したのは初めて?

例えば・・・・

(いつ?)今朝7時頃
(何をしている時?)仕事の支度をしていたら突然
(どんな?)胸の真ん中が痛い、ぎゅーってなる感じ、胸をつかまれる感じ・・・
(胸の症状以外は?)汗がぶわっと出た
(持続時間は?)朝よりはましですが今も辛いです
(初めて?)1ヵ月前から時々ありました

このような内容をメモして、医師や看護師にお渡し下さい。

病院に行こうか迷っておられる方や、病院に行く前にどんな病気の可能性があるのか、また検査や治療方法について、ある程度知っておきたいという方は引き続き記事を読み進めて下さい。

3、心臓や血管が原因の場合

胸の辺りには、心臓、血管、食道、胃、肺、肋骨・背骨、筋肉などの様々な臓器が存在します。その中で、心臓や血管が原因のものとして以下が挙げられます。

  • 心筋梗塞(しんきんこうそく)
  • 心筋炎、心膜炎(しんきんえん、しんまくえん)
  • 大動脈解離(だいどうみゃくかいり)
  • 肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)

心筋梗塞

心臓を栄養する冠動脈(かんどうみゃく)が詰まってしまうことにより、心臓の細胞が窒息死する病気で、致死率2割とも3割とも言われる突然死の一因です。
胸周辺の症状に加えて冷や汗、息苦しさ、動悸などを伴ったり、肩、腕、顎、歯などに痛みが放散することがあります。
心筋梗塞の治療は時間との勝負です。1分でも早く救急医療を受けられる医療機関に搬送されることが重要です。
心筋梗塞についての詳細はこちら

心筋炎、心膜炎

これまで心臓の病気を指摘されていない方、健康な方、若い方にも突然起きる病気です。
原因はウイルスや細菌感染、薬や放射線治療などです。
心臓への副作用のある治療を受けておられる方や、風邪症状(発熱、せき、倦怠感などのかぜ症状、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状)に伴って動悸、胸痛、不整脈、呼吸困難、失神などが合併する場合には、心臓の炎症である心筋炎・心膜炎を考えます。
ウイルス性心筋炎の場合は、多くが一過性で数週間の経過で治癒します。しかし、「劇症型心筋炎」といって高度な収縮不全となってしまった場合には命に関わる事もあるため、入院管理を要する病気となります。
心筋炎、心膜炎についての詳細はこちら

大動脈解離

心臓から押し出された血液が通過する大動脈は、内側から内膜、中膜、外膜の3層構造になっています。3層全体での厚さは2㎜程度で、心臓から送り出される血液の強い圧力に耐えられるようにできています。しかしその圧力に耐えられなくなった内膜に亀裂が入り、中膜と外膜の間に血液が流れ込むと、心臓からの大きな圧力により裂け目が一気に広がっていきます。これが大動脈解離です。
発症すると致死率が非常に高く、心筋梗塞を上回ると言われているほど緊急度の高い血管の病気です。
大動脈解離は、胸、お腹から背中にかけて、上下に非常に強い痛みが走ることが特徴です。
この痛みは、大動脈という一番太い血管が裂けていくことで生じる痛みです。
また痛み以外にも大動脈解離は血管の裂け方によって意識が朦朧とする、意識がなくなる、手足の麻痺、腹痛なども生じます。
これらの症状は、血管が裂けたことで裂けた場所の先にある臓器に血液がいかなくなることが原因です。
一刻も早く救急医療機関での治療が望まれます。
大動脈解離についての詳細はこちら

肺血栓塞栓症

肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)は、肺の血管(肺動脈)に血の固まり(血栓)が詰まって、突然の呼吸困難や胸痛、失神、心停止をきたす病気です。
エコノミークラス症候群という病気で知られる事が多いかもしれません。
血流が滞るような状態(長期入院中の方、同じ姿勢を長時間続けている方、妊娠中、カテーテル留置など)、血栓ができやすい病態(脱水症、ガンなど)が肺塞栓症のリスクとなります。
心筋梗塞、大動脈解離とともに一刻も早く救急医療機関への搬送が救命の鍵となります。
肺血栓塞栓症についての詳細はこちら

4、心臓や血管以外に原因がある

  • 食道破裂
  • 胃炎や逆流性食道炎
  • 気胸
  • 肋間神経痛
  • 肋骨や背骨の骨折
  • 帯状疱疹

など、呼吸器、消化器、筋骨格系、皮膚疾患など様々な原因が考えられます。
いつ、どの様な時に、どんな風な症状なのかといった問診によりある程度的を絞る事もできます。

食道破裂:しょくどうはれつ

食道破裂の主な原因として、手術や内視鏡検査などの際に食道の内壁が傷ついた場合と、激しい嘔吐や大きな食べ物のかたまりが食道につかえることで食道が傷つく場合が考えられます。心臓や血管の病気との鑑別としては、飲食や嘔吐に伴って現れたものかがポイントとなりますので、どんなときに症状が起きたのかを伝えるようにしましょう。

胃炎や逆流性食道炎

過剰な胃酸分泌や、食道への逆流により粘膜が炎症をおこすことで痛みなどの症状が現れます。
みぞおちの痛みや、不快感と言う症状は心筋梗塞とよく似ており症状だけでの見極めは難しくなります。実際に胃腸症状と思って消化器内科を受診した方が、結局は循環器内科に紹介されて心筋梗塞の治療をおこなったとうケースもあります。

気胸:ききょう

気胸とは、突然肺が破れてしぼんでしまう病気(肺のパンク)です。 肺が完全にしぼんでしまうと、酸素が身体に十分入らなくなり呼吸困難を起こしてしまいます。
気胸は若い健康な男性によくみられる病気で、元々肺の一部に「ブラ」と呼ばれる壁の弱い部分があり、それが破れるため発症します。

肋間神経痛

肋骨に沿って痛みが走りますので心筋梗塞などの心臓病とまぎらわしい症状ですが、体をひねったり伸ばしたりした時に症状が出たり、ピリピリ・チクチクといった痛み症状が特徴で、冷や汗や息苦しさなど心筋梗塞のような胸の症状+αの伴わない事が多いです。

背骨や肋骨骨折

転倒や衝突など明らかな骨折を疑うもの以外に、骨粗鬆症があると寝返りやくしゃみでも骨折が生じます。痛みが楽な姿勢と酷くなる姿勢があるなど、動きや姿勢により痛みの程度が変化する場合は、筋肉や骨、神経の問題が考えられます。

帯状疱疹

帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスで起こる皮膚の病気です。 体の左右どちらかの神経に沿って、ズキズキ・ピリピリといった痛みを伴う赤い発疹と水ぶくれが多数集まって帯状に生じます。

5、検査について

胸の痛みや不快感で来院された患者さんの検査では、以下の検査を必要に応じて行うことで原因を探ります。

①問診

症状の出現タイミングや持続時間、どんな種類の症状か、胸の症状以外の症状の有無、治療中の病気の有無などについてお伺いし、ある程度狙いを定めて必要な検査を選択します。

②心電図検査

心臓の電気的な異常を診断します。ベッドに寝て、電極を手足と胸の数か所につけるだけの検査で1分ほどで終了し痛みはありません。その波形をみて、心臓に異常がないかチェックします。
ただ、心筋梗塞の一歩手前の狭心症の場合には検査の時には症状がおさまっていることもあり、1分程度の心電図検査では心臓の異常をとらえることができないこともありますので、その場合には24時間心電図検査(ホルター心電図)を実施することで、原因を捉えられる可能性が高まります。
また、運動をした時など心臓に負担をかけた時に胸の症状が現れるなどのケースでは、安静時の心電図検査では異常を見つけられない事もあるため、自転車やウォーキングマシンを使って敢えて心拍数や血圧を上げた時の心電図を評価する運動負荷試験が行われる場合もあります。

③血液検査(心筋逸脱酵素など)

心臓やその他の臓器が障害を受けると、血液中の成分に異常が生じます。たとえば、心筋梗塞では血流不足により心臓の筋肉(心筋)が壊死し始めると、心筋の中に存在するたんぱく質が血液中に漏れ出します。主な項目としては、ミオグロビン、CK-MB、トロポニンIなどがあります。これらの数値が高ければ心筋梗塞を強く疑う所見になります。
このように、どの臓器に原因があるのか、重症度はどうかなど様々な情報を評価して診断していくことになります。

④心臓超音波検査

心臓超音波検査は、心臓の大きさや弁などの構造上の異常や、心臓の動きを詳しく調べる検査です。ベッドに寝た状態で、超音波装置を胸にあてて検査を行います。ゼリーを付けたプローブを胸に当てるだけなので負担はありません。検査時間は10-15分程度です。
また、心臓だけではなく心臓から出た大動脈の異常(大動脈解離や大動脈瘤)といった、胸部症状を引き起こす可能性のある血管病も評価することができます。

⑤胸部X線検査(レントゲン検査)

胸部X線検査とは、胸部全体にX線(放射線の一種)を照射して、肺や心臓などの異常を確認する検査です。胸部X線検査では、結核、肺炎、気胸、肺がん、心肥大、大動脈瘤、骨折などの異常が見つかることがあります。

★下記は当クリニックでは行えませんので、専門の医療機関へご紹介させていただきます。

⑥胸部造影CT検査

CTとはComputed Tomographyの略で、コンピュータを駆使したデータ処理と画像再構成で断層写真を得ることの出来る装置のことです。CT検査では、頭から足の先まで体全体を調べることが出来ます。
胸部CT検査では、肺がん、肺結核、気管支拡張症、気胸、胸部大動脈瘤、肺動静脈瘻、心臓疾患などの病変が、小さなものまで発見できます。

⑦心臓カテーテル検査

狭心症、心筋梗塞など心臓を栄養する冠動脈(かんどうみゃく)の閉塞を疑った場合や除外診断(心筋梗塞ではないという診断)を行う際に、心臓カテーテルによる検査を実施します。
細長い管のカテーテルを手首や、あしの付け根の動脈から入れて、血管を通して心臓まで到達させます。
心臓カテーテル検査をすることによって、冠動脈のうちのどの血管がどの程度狭くなっているか、またどの血管がつまっているかなどを詳細に調べることができます。専門の施設で入院をして実施する検査となります。

6、治療について

各疾患ごとに治療内容が異なりますので、詳細は各疾患解説をご参照下さい。

最後に

ここまで読んでいただきありがとうございました。
特に冒頭でも記載したように、今までに感じたことのないとても強い胸の症状、どんどん悪化してくる、胸の症状以外にも動悸や息苦しさと言った症状がある場合には緊急度の高い病気の可能性が高いので、迷わず119番通報を行いましょう。

また、病院に行くかどうか迷う位の「胸が苦しい」「胸が痛い」「胸がしめつけられる」「胸に圧迫感を感じる」などの症状で不安に感じておられる方、どうしたらいいか迷っておられる方は、一度お近くの医療機関にご相談いただくのも解決手段の一つだと思います。
大阪、天王寺区近隣の方でしたら、夕陽ケ丘ながいクリニックにご相談ください。