「急に心臓がドキドキ、バクバクする」「ドクドクと脈が強くなり気持ち悪い」「ドッキン・ドッキンとゆっくり脈打つ感じがする」「気がついたら心臓が速くなっていた」「心臓の鼓動が大きく聞こえる」など、動悸を訴える方の表現はたくさんあります。いずれにしても、急に起きる動悸は気持ち悪く、不安にさせるものです。
突然起きる動悸の症状で困っていたり、不安に感じておられる方、病院に行こうかどうしようか迷っておられる方は、引き続きこの記事をお読み下さい。

1、病院に行くべきか迷ったら

仕事や学校などの予定を調整してまで病院に行くことがハードルの高いことだと思われる方や、もう少し様子を見てみてもいいのかなと迷いながらも判断されている方など、「病院に行った方がいいのか、どうしようか迷う」というのはよくありますよね。
そんな時、以下のような症状があれば緊急事態である可能性が高いので、可能な限り早く(夜間でしたら救急車を呼んで)医療機関に受診・相談されることをお薦め致します。
動悸症状と一緒に、

  • 冷や汗がでる
  • 息苦しい
  • 目の前が真っ暗または真っ白になる
  • めまいやふらつきがある
  • 吐き気が出る、または嘔吐する

また、ここまでではないけれど動悸症状を頻回に自覚する方、動悸症状に加えて上記のような症状が少しでも加わる方も、早めに医療機関を受診されることをおすすめします。動悸は様々な原因で起きますが、最終的には心臓という臓器の動きとして現れますので、心臓を診るのが専門の循環器内科を受診されることをお薦め致します。
近くに循環器科が無い場合には、一般内科を先ず受診して医師に症状の相談をしてみましょう。

2、症状を伝える時のポイント

いざ医療機関を受診しても、自分の身に起きている症状を上手く言葉に出して説明できないこともありますよね。そんな時は、以下のような内容をおさえてメモをしておくのもお薦めです。 

  1. どんな時に起きるのか
  2. どの程度(強さや時間、頻度)
  3. 動悸以外の症状があるのか
  4. 何時頃から動悸を感じ始めたのか
  5. 動悸症状の変化について(変わらない、悪化している、改善したけどまだある) 

例えば・・・・

(どんな時に)仕事中でも家でも急に起きる。動いている時、椅子に座っている時などバラバラ。

(程度や頻度)3分程度続く、心臓が飛び出るんじゃないかという感じ。週に2~3回。
(動悸以外の症状)気分が悪くなるけど、吐き気といった感じではない
(何時頃から)1ヶ月前から
(動悸症状の変化について)変わらない(良くもなっていないし、悪くもなっていない)

このような内容をメモして、医師や看護師にお渡し下さい。

病院に行こうか迷っておられる方や、病院に行く前にどんな病気の可能性があるのか、また検査や治療方法について、ある程度知っておきたいという方は引き続き記事を読み進めて下さい。
ここからは、動悸の原因についてや、動悸の検査、治療について順にお伝え致します。

3、動悸とは?

動悸(どうき)とは、「普段は感じる事のない自分の心臓の(動き・鼓動・拍動)を感じてしまう状態」のことです。
50m走などの全力疾走の後や、駅の階段を駆け上がった直後に、心臓がドキドキと強く動いている感覚を覚えていませんか?運動することにより、心臓が全身に血液を送り出すために強く速く動いていることが原因で、これは正常な心臓の動きで、しばらく休むと心臓の動きも緩やかになり動悸も自然と治まってきます。
一方で、安静にしている時、緊張しているとき、発熱など体の調子が悪い時にも、同じように心臓の鼓動が速くなり動悸を感じることがあります。このような場合には、運動の時とは違って、異様に強く感じたり、動悸そのものにより余計に不安や緊張を増してしまい、動悸症状を強く感じたり、長く感じてしまうといったことも起きます。
ではこの動悸が起きる原因は何なのでしょうか?
次に動悸を引き起こすものとして、心臓が原因のもの、心臓以外に原因があるものとに大別してお伝えします。

4、心臓に動悸の原因がある場合

心臓そのものに問題がある場合として、①不整脈、②弁膜症、③心不全、④狭心症などが挙げられます。

①不整脈

正確に拍動リズムを刻んでいる心臓ですが、たまにそのリズムが乱れることがあり、これを不整脈と呼んでいます。主な不整脈として、心臓の拍動が突然速くなる発作性頻脈性不整脈、心臓の拍動が遅くなる徐脈性不整脈、心臓の拍動が全くのバラバラになる心房細動、時折心臓のリズムが乱れる期外収縮などがあります。

②弁膜症

心臓には血液の逆流を防ぐための4つの弁が存在します。その弁の機能が悪くなると心臓に負担がかかり、結果として不整脈を引き起こすことがあります。

③心不全

心臓の動きが悪くなり、血液を全身に送る働きが不十分になることで、息切れやむくみ、動悸といった症状が現れるのが心不全です。心不全は、弁膜症や心筋梗塞、高血圧症や糖尿病など、心臓そのものの病気以外にも様々な生活習慣病の行き着く先として存在します。心不全になると、心臓の拍動が速くなったり、様々な不整脈を引き起こすことがあり、これが動悸症状につながることがあります。

④狭心症

心臓を栄養する血管(冠動脈)が狭くなり、血流が悪くなることで心臓の筋肉が酸欠状態になるのが狭心症です。特に運動をすることで心臓の酸欠状態が強くなるので、その危険信号として胸が重苦しくなったり、心臓の動きが速くなることがあり、このために軽い運動しかしていないのに動悸を感じるといったことが起きます。

5、心臓以外に原因がある動悸

動悸の症状の原因として以下のような心臓以外のものが原因であることの方が多く見受けられます。

①生活習慣や嗜好品

  • コーヒー、紅茶、栄養ドリンク(エナジードリンク)などに含まれるカフェイン
  •  アルコール
  •  タバコ
  •  睡眠不足
  •  疲労の蓄積
  •  精神的身体的ストレス
  •  発熱
  •  脱水

これらは、結果として交感神経系を活性化させてしまうことで心拍数を増やしたり、場合によては不整脈を引き起こすことで動悸症状へと繋がる可能性があります。日常生活を整えることで動悸症状が減ることはよくあることです。

②基礎疾患がある場合

パニック障害など精神疾患

自律神経系が乱されることで不整脈を起こし易くします

甲状腺疾患(バセドウ病)

甲状腺ホルモンの過剰分泌により起こるバセドウ病は、甲状腺ホルモンの影響により心拍数を増やします。安静にしていても心臓の拍動が速いためにドキドキバクバクといった動悸につながります。バセドウ病は、特に若年の女性に多く、動悸症状に加えて、体重が減ってくる、疲れやすい、大量の汗をかくなどの症状を伴う事があります。

貧血

貧血は血液中で酸素を運搬するヘモグロビンの濃度が下がるものをいいます。酸素の運搬がうまくいかないので、心臓は拍動を速めて(心拍数を上げて)血液を全身に送ることで、全身の臓器が酸素不足にならないように自己調整します。貧血が進むと軽い運動時にも息切れや動悸などの自覚症状が起こりやすくなります。原因としては鉄欠乏性貧血が多いですが、その他にも慢性腎臓病や腸管出血、婦人科系疾患、血液疾患など様々な病気が貧血を引き起こします。

更年期障害

女性ホルモンのバランスが崩れることで、自律神経の不調が起きるのが一因と考えられます。

呼吸器疾患

気管支喘息発作などが起きると、息が苦しくなり交感神経系が活性化されます。交感神経系の活性化は心拍数を増やすために、動悸症状に繋がります。また気管支喘息で用いる吸入薬には、副作用として頻脈を起こすものがあります。
 また気管支喘息以外にも、タバコ病として有名なCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺気腫といった肺の病気も、低酸素状態になりやすいことから、交感神経系を介した心拍数の増加がおこり動悸症状につながります。

6、検査について

動悸で来院された患者さんの検査では、以下の検査を必要に応じて行うことで動悸の原因を探ります

①問診

動悸の出現タイミングや持続時間、どんな種類の症状か、動悸以外の症状の有無、基礎疾患について、徐々に悪化しているのかどうかなどをお伺いし、動悸の原因の目星をあるていどつけつつ、必要な検査を選択します。

②聴診

聴診器で心臓や肺の音を聴くことで、心臓の拍動の乱れぐあいを聴くことができます。
また心臓の雑音があれば、弁膜症などに伴う動悸である可能性も考えます。

③心電図検査

動悸症状は、不整脈(心臓の拍動の乱れ)により生じる事があります。心臓が速く動き過ぎてしまうもの、反対に遅すぎるもの、心臓の拍動が全くバラバラになっているもの、時折拍動のタイミングがズレているものなど、不整脈には沢山の種類がありますが、心電図検査はその判別にとても有効な検査です。特に検査時にも動悸症状が続いている場合に行うことで、動悸の直接の原因を見極める事につながる重要な検査です。
ただ動悸を引き起こす不整脈の原因を突き止めない事には、根本的な治療にならないので、以下の検査を合わせて実施し、総合的に動悸の原因を探っていきます。

④24時間心電図検査(ホルター心電図)

通常の心電図検査で調べられる心拍は長くても1分程度なので、検査時には動悸がおさまっているものや発作的に起きる動悸は検出できないこともあります。そのため丸1日の心拍を調べる事ができるホルター心電図検査を受けて頂くこともあります。

⑤血液検査(貧血、甲状腺機能、電解質など)

貧血や甲状腺機能異常など、脈が飛ぶ原因である不整脈を引き起こす病気がある場合には、その病気を治療しないと不整脈の根本的な治療になりません。また、不整脈が心臓に負担をかけている場合も血液に現れます。そのため、様々な臓器の異常サインを教えてくれる採血は、不整脈治療において重要な検査と言えます。

⑥心臓超音波検査(心臓の大きさ、弁膜症、心不全など)

心臓超音波検査は、心臓の大きさや弁などの構造上の異常や、心臓の動きを詳しく調べる検査です。不整脈の影響により心臓の機能が低下してしまうことが考えられるため、不整脈の種類や程度により心臓機能を調べることもあります。
また、心臓超音波検査は、心臓疾患に伴う合併症を診断するためにも使用されます。心臓疾患が原因で期外収縮を発症することがあるため、心臓超音波検査によって弁膜症など心臓疾患の有無を確認することが重要です。

7、治療について

動悸の原因となる不整脈の治療には、生活習慣の改善、薬物治療、カテーテルアブレーションなどの方法があります。

①生活習慣の改善

不整脈において、特別な治療を要するモノというのはそれほど多くありません。症状を気にしないで済むのであれば、不整脈の程度に悪化を認めないかを定期的に検査するだけで様子を見ることになります。ただ、どうしても症状が気になる場合にはお薬を使用することもありますが、その前に、不整脈を引き起こしやすくする生活習慣の改善も試してみたいものです。
コーヒーや紅茶、最近はやりのエナジードリンクには、不整脈を起こしやすくするカフェインがふくまれています。1週間程度これらの摂取を控えてみて、動悸症状の変化を観察してみるのもよいかもしれません。
アルコールや喫煙も心拍数を増やしたり、不整脈発生の原因となっていることもあるので、お薬に頼りたくない場合には呑まない、吸わないを意識してみましょう。
睡眠の質を良くしたり、生活リズムを整えること(適度な運動、お風呂で体を温める、就寝時間前の飲食を控える、起床時間をそろえることなど)で自律神経系が整い、動悸・不整脈の改善に繋がることがあります。
ストレスなど、自分ではコントロールし辛いものもありますが、上記のように自分である程度コントロールできるものもあると思います。忙しい日々の中であっても、取り組めそうなものから試してみるもの良いかもしれません。

②薬物療法

お薬に関しては、不整脈そのものを抑える薬剤、心拍数を減らして動悸症状を軽減させる薬剤、不整脈による悪影響を回避するための薬剤など、不整脈の種類に応じて決定されます。
その一部を下記でご紹介します。

  • β遮断薬…心臓の交感神経系作用を抑えることで、不整脈を抑えたり、心拍数を減らす作用を期待して投与されます。
  • カルシウム拮抗薬…頻拍の伝導を伝える部位に作用するお薬です。心拍数をゆっくりにさせる効果を期待して投与され、頻拍発作時の頓服として処方されることもあります。
  • ナトリウム遮断薬・・・不整脈の発生をおさえる効果を期待して処方されます。効果と共に副作用にも注意が必要なものも多く、循環器専門医など取り扱いに慣れた医師が使用する事が多い薬剤です。
  • 抗凝固薬…血の塊(血栓)が作られるのを予防するお薬で、主に心房細動の方に使用されます。

③カテーテルアブレーション

カテーテルアブレーションは、不整脈の原因となる部位にカテーテルを挿入し、高周波電流や凍結などの方法によって、心筋細胞を破壊する治療法です。カテーテルアブレーションは、特に心房細動や発作性上室性頻拍など頻脈系(心拍数が速くなる、動悸症状の原因となる不整脈)の治療に有効で、薬物治療が効果的でない場合や、薬剤による副作用がある場合に行われます。治療は入院をして行うことになり、1週間程度の入院期間になります。

最後に

ここまで読んでいただきありがとうございました。
動悸で困っていたり不安に感じておられる方、どうしたらいいか迷っておられる方は、一度お近くの医療機関にご相談いただくのも解決手段の一つだと思います。大阪、天王寺区近隣の方でしたら、夕陽ケ丘ながいクリニックにご相談ください。