ご自身やご家族の「いびきがうるさい」「突然いびきが止まったと思ったら呼吸をしていない」「日中の眠気・睡魔」「休んでもとれない疲労感・倦怠感」にお悩みの方へ・・・それは、もしかしたら睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)が原因かもしれません。
睡眠障害の一つである睡眠時無呼吸症候群であった場合には、単に生活や仕事の質をおとすだけではなく、心筋梗塞や脳梗塞などの病気の発症リスクを高めたり、病状の悪化を促してしまう恐れがありますので、「気になる程度」の段階でお早めに当院にご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)とは?

その名の通り、睡眠中に10秒以上の無呼吸(息が止まっている)状態が繰り返される病気で、その無呼吸が睡眠中7時間の間に30回以上、もしくは1時間の中で5回以上無呼吸が起こっていれば、「睡眠時無呼吸」と診断されます。

重症になると、

  • 合併症(心筋梗塞、心不全、脳卒中)で健康を害するリスクが高くなる
  • 車などの運転や危険作業に従事される方は、居眠り事故のリスクが高まる

など、「たかがいびき」と侮れない病気です。

睡眠時無呼吸症候群の有病率

男性で5%前後、女性で3%前後とされています
また、現在は特に症状は無いけれど検査で無呼吸(1時間に15回以上の無呼吸)が証明されている睡眠関連呼吸障害の有病率は、50歳代の女性で10%、男性で20%程度とされています。実に10人に1人以上もの方が、睡眠時無呼吸症候群に移行する可能性があります。
(※睡眠時無呼吸症候群ガイドライン2020より)

直ぐに受診した方がいい症状

以下のような症状がある場合(または指摘される場合)は、重症の睡眠時無呼吸の存在、また重大な事故や健康被害を引き起こしてしまう可能性が考えられますので早めに医療機関に受診下さい。

  • 居眠り事故を起こした(起こしかけた)
  • 作業をしながらでも無意識に眠っていることがある
  • 突然いびきが止まり、10秒以上呼吸が止まっていると指摘されたことがある

睡眠時無呼吸症候群の症状が起きる理由

  1. 睡眠中に無呼吸が繰り返されると、血液中の酸素濃度が低下し体に必要な酸素が不足します。
  2. 血液中の酸素が不足すると、心拍数を上げて何とか全身に酸素を送り込もうと交感神経系が活性化します。
  3. 交感神経系が活性化することで深い眠りに入ることが出来ないため、体が休まらず、日中の眠気やだるさ、集中力低下といった症状につながります。

よくある自覚症状

寝ている間

  • いびきがひどい
  • 夜中に苦しくて目が覚める
  • 寝汗をよくかく

起床時

  • 起床時に頭痛がする
  • 起床時に喉や口の中が渇いている
  • スッキリしない

日中

  • 日中に強い眠気やだるさがある
  • 睡眠時間はとれているのに疲れが取れない
  • 仕事などの集中力が続かない
  • 記憶力が低下している

これらの症状は、生活や仕事の質を低下させる一因となります。
また、睡眠時無呼吸症候群では、交感神経系が活性化されることにより血圧が上昇したり、心拍数が上昇するなど血管や心臓に負担を強いることになります。血管や心臓への影響が長期間に及ぶと、心筋梗塞や脳梗塞と言った重大な病気につながります。

上記のような症状を認める場合には、睡眠の質を確認するための検査及び、適切な治療を行うことで上記のような症状や合併症の予防・改善も期待できますので早めに医療機関に相談されることをおすすめします。

睡眠時無呼吸症候群の原因

睡眠時無呼吸症候群の原因は、閉塞性(OSA)か中枢性(CSA)かによって異なります。
ここではより一般的な閉塞性睡眠時無呼吸症候群の主な原因についてご紹介します。

睡眠中は気道が狭くなりやすい

睡眠時は喉の筋肉が緩み、空気の通り道である気道が狭くなりやすいです。そこに何らかの要因(骨格、口呼吸、肥満、飲酒など)が加わることで、いびきをかきます。
いびきをかいている時には、まだ何とか空気が通過出来ているのですが、さらに閉塞が強まると息が吸い込めなくなり、呼吸が止まります。そのままでは窒息死してしまいますので、より強く息を吸いこむ(より大きなイビキ)、息苦しくて覚醒する(目覚める)というようなことが起きます。

気道を狭くする原因(生まれ持った骨格)

  • 首が短く太い
  • 顎が小さい
  • 舌が大きい
  • 口蓋垂が大きい

気道を狭くする原因(体系や生活習慣)

  • 肥満体系
  • 首周りに脂肪が多い
  • 就寝前のアルコール摂取
  • 仰向けで寝る
  • ストレスや疲れ

気道を狭くする原因(病気など)

  • 肥満症
  • アレルギー性鼻炎
  • 扁桃腺やアデノイドの肥大

睡眠時無呼吸症候群の検査と重症度分類

睡眠時無呼吸症候群の検査

①簡易モニター検査

ご自宅で手の指や鼻の下にセンサーをつけて、いびきや呼吸の状態を調べます。センサー装着の違和感は有りますが痛みはなく、いつもと同じように眠っている間に測定できる検査です。
なお、CPAP治療の適応となるのは、簡易検査で無呼吸指数であるAHIが40以上かつ、眠気などSASの症状が明らかな場合となります。
また、簡易検査では低酸素状態になっていることがわかるだけで、睡眠の状態や質の情報は得られませんので、簡易検査の結果によっては、脳波や睡眠の深さを調べる精密検査(PSG検査)が必要になる場合もあります。

精密検査(終夜睡眠ポリグラフィー検査:PSG検査)

1泊の入院をして、睡眠と呼吸の質を調べる検査です。夕方に入院して検査機器を装着しながら病室で就寝し、翌朝退院となります。簡易検査の項目に加え、脳波、筋電図、眼球の動きなどを測定することにより、睡眠の質(ノンレム睡眠の深さやレム睡眠の状態)などを調べることができます。
なおPSGを実施した場合にCPAP治療の適応となるのは、無呼吸指数であるAHIが20以上の場合となります(簡易検査とは基準が異なります)。

睡眠時無呼吸症候群の重症度分類

睡眠1時間中に起こる「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数を「無呼吸低呼吸指数=AHI(Apnea Hypopnea Index)」と言い、この値により重症度を分類がなされます。

  • 軽症(5≦AHI<15)
  • 中等症(15≦AHI<30)
  • 重症(30≦AHI)

※睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020より

治療について ①CPAP

CPAP(シーパップ)とは

Continuous Positive Airway Pressureを略した用語で、持続的陽圧呼吸療法と訳されます。
主に、気道が狭くなることが原因の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられます。
CPAPは就寝時に使用する機器で、鼻に装着したマスクから送り込んだ空気の圧で空気の通り道を確保する治療です。
CPAP治療を行うことで睡眠中の無呼吸やいびきが軽減し、しっかりと眠れるようになるため、昼間の眠気や疲労感などの症状が改善します。マスクを装着して寝ることに違和感がある人もいますが、毎日装着しているうちに多くの患者さんが慣れていきます。不安なことがあれば医師に相談しましょう。

CPAPの効果

  • 強い疲労感や日中の眠気、集中力や注意力の低下が改善
  • いびきの改善
  • 血圧の低下(高血圧治療)
  • 心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気の発症抑制

CPAPの適応となるケース

簡易検査やPSG検査による無呼吸指数(AHI)の評価が必要です。
また、CPAPの適応となる両検査のAHIの数値が異なります。
簡易検査では、AHIが40以上で眠気などSASの症状が明らかな場合にCPAP療法が開始されます。
PSG検査では、AHIが20以上の場合でCPAP療法が開始されます。

CPAP治療の進め方

  1. 検査によりCPAP治療を開始。機器はレンタルになります。
  2. 専門業者の方がCPAPの機器の設置、使用法の説明をして下さいます。ご理解頂ければ治療開始となります。
  3. 毎月1回通院頂き、CPAPの使用頻度や治療効果などを確認し、必要に応じて設定圧などの調整を行います。
    ※健康保険でCPAP治療を受けるためには毎月1回以上の外来受診が必要

CPAP治療はいつまで?

CPAP療法は、対処療法となります。近視に対してめがねをかけている状態と同じで、使い続ければいつか睡眠時無呼吸症候群が治るというものではありません。基本的には、睡眠時に無呼吸がある限りは使い続ける必要があります。
CPAP療法を中⽌するためには、前述した気道が閉塞してしまう原因を取り除く事、⼿術、マウスピースなど他の治療法により無呼吸が消失すればCPAPを中止することを検討します。

CPAPの費用

保険自己負担 1割約1500円、2割約3000円、3割約4500円となります。

治療について ②生活習慣

アルコールを控える

アルコールは中枢神経系を抑制し、筋肉の緊張を低下させることがあります。その結果、気道の筋肉が緩み、気道が閉塞しやすくなることがあります。また、アルコールは睡眠の質を低下させるので、無呼吸の原因であり増悪因子でもあります。
1日のアルコール摂取は純アルコール換算で男性で20ー25mg、缶ビール500ml、日本酒1合です。また女性では男性の半分の摂取までが推奨されています。
禁酒できるに越したことはありませんが、特に就寝前のアルコール摂取は控えるようにしましょう。

カフェインを控える

カフェインは覚醒作用があるので、コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなどの摂取は就寝前には控えましょう。
お水または麦茶がおすすめです。

禁煙

喫煙の習慣も、いびき、そして睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させます。タバコを吸うと、鼻や喉の粘膜に炎症や腫れ、むくみを発生させます。これにより、気道を狭めていびきをかきやすくしてしまうのです。

口呼吸の改善

就寝中に口呼吸になると、喉の奥の筋肉が奥に落ち込みやすくなり、気道が狭くなったりいびきをかきやすくなります。
普段から鼻呼吸を意識することや、鼻呼吸を促す「鼻呼吸テープ」や「鼻腔拡張テープ」などを利用するのも一つの手段です。
ドラッグストアで購入できますので一度試してみるのもよいかもしれません。

仰向けで寝ない

仰向けで寝ると、舌や喉の奥の筋肉が落ち込み、気道が閉塞しやすくなります。
抱き枕などを利用して横向きで寝てみましょう。

治療について ③肥満の是正(BMI35以上で手術を考慮)

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の約半数に肥満が伴ていると言われています。
肥満を改善することで、気道閉塞の解消から症状が軽減させることが期待できます。
先ずは、体重の5%減少を目指し、可能であれば10%減少を目指しましょう。

治療について ④その他

マウスピース

マウスピース治療は、専用のマウスピースを就寝時にはめることで、気道を詰まらせる「舌の落ち込み」を軽減し、気道が広がります。空気の通りが良くなっていびきが緩和されます。
マウスピースは歯科で作成していただき、メンテナンスの為定期的な通院が必要となります。

手術

扁桃腺摘出術(Tonsillectomy)とアデノイド摘出術(Adenoidectomy):
扁桃腺やアデノイドが腫れて気道を狭めることがSASの原因となることがあります。これらの組織が拡大している場合、摘出術が行われることがあります。

上顎洞拡大手術(Maxillomandibular Advancement, MMA):
この手術は、上顎骨と下顎骨を前方に進めて気道を拡大することを目的としています。これによって気道の狭窄を軽減し、無呼吸症状を改善することができます。

軟口蓋・口蓋垂切除術(Uvulopalatopharyngoplasty, UPPP):
軟口蓋や口蓋垂が気道を狭める原因となることがあります。この手術では、これらの組織を一部切除して気道の拡張を図ります。

舌根切除術(Genioglossus Advancement):
舌根部の筋肉を前方に移動させて気道を拡大する手術です。舌の位置が気道を狭める要因となる場合に行われます。

顎骨手術(Orthognathic Surgery):
顎の位置や咬合(かみあわせ)を調整する手術で、気道を拡大する効果があることがあります。

睡眠時無呼吸症候群と循環器専門医

睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や狭心症・心筋梗塞などの循環器疾患合併症の発症因子であり、増悪因子でもあります。
このように循環器疾患と深いかかわりを持つ睡眠時無呼吸症候群の治療において、循環器の専門的知識・経験は患者さんのお役に立てるはずです。当院では、日本循環器学会認定の循環器専門医が、合併症の予防にも力を入れた睡眠時無呼吸症候群の治療を提供します。
いびき、眠気、倦怠感など睡眠の質の低下による諸症状でお困りの方は、大阪天王寺区にございます夕陽ケ丘ながいクリニックにご相談下さい。