循環器疾患の治療の中で、不整脈治療は診断や治療の技術がかなり進歩した分野だと言われ、以前は薬でしか対応できなかった不整脈の根治が可能なケースも増えてきています。

そのためにも不整脈の早期発見がキーワードになりますので、動悸、息切れ、脈が飛ぶ、ふらつきや失神(意識を失う)などの症状がある方、健康診断で心電図異常を指摘された方は、ぜひ一度、夕陽ヶ丘ながいクリニックにご相談ください。

心臓が動く仕組み

心臓は全身に血液をおくるポンプの働きを担っています。
心臓に血液を貯めては押し出す。押し出したらまた貯める・・・という動作を一定のリズムで、規則正しく続けています。

そんな規則正しい心臓の拍動リズムをつくっているのが、心臓を流れる電気刺激です
心臓には、心臓自ら電気を作り出し、その電気を心臓の筋肉全体に送るシステム、発電所と送電線が心臓に存在します。

心臓はイメージしにくいかもしれませんが、私たちの生活の中の電気をイメージしてみましょう。
私たちが普段使っている家電を動かすための電気は、発電所が作ります。発電所で作られた電気は電線を伝わって、各家庭に届けられ、家電を使うことができます。

この発電所や送電システム(電線)の異常が生じると、家庭に電気は届くことなく家電は正常に動かすことができなくなります。
この発電、送電システムの故障と同じことが、心臓で起こるのが不整脈です。

結果として心臓が動くタイミングがズレたり、回数が少なかったり、早く動かしすぎたり・・・など、心臓の動きの異常が生じるようになります。

不整脈は怖い?

不整脈は自分で気づかないうちに起きていることも多く、健康な人にでもよく起こります。
全ての不整脈に治療が必要となることはありません。実際医療機関に不整脈で相談に来られる方の多くは、不整脈を起こしやすい喫煙や過度の飲酒、睡眠不足といった生活習慣を改善させることで様子をみましょうとなっていますので極端に不安になる必要はありません。

放っておけない不整脈

働き者の心臓もたまには間違います。
しかし危ない間違い方、つまり健康を損なう可能性のある不整脈や、命に関わるような不整脈は放ってはおけません。



たとえば、心原性脳梗塞という言葉を聞かれたことはあるでしょうか・・・脳の血管が詰まってしまい脳細胞が死滅して、重い後遺症や命を奪う脳梗塞の原因の約3割が、実は不整脈が原因と言われています。

また、弁膜症や狭心症など、何かしらの心臓の病気があり、そのSOS信号として不整脈を引き起こしていることもあります。
様子を見れる不整脈なのか、治療が必要な不整脈なのかを見極めて付き合っていくためにも、まずは適切な診断を受けることが大切です

放っておいてもよいものなのか、治療が必要なものなのかは、専門医であっても症状だけでは十分に把握できません。
この記事を含め、インターネットで症状を検索すると、危険な不整脈とそうでない不整脈の説明を見ることができますが、大切なことは自己判断しないことです。「症状としてはこれだから大丈夫だろうな」と思っても、一度早めに専門家の診断を受けることをお勧めします。

不整脈は何科を受診?

不整脈の相談についてですが、不整脈は心臓という循環器の病気の一つですので、循環器内科が理想的です。
ですが近くになければ、まずはあらゆる病気のゲートキーパーとなる内科にまず相談してみてください。大阪天王寺区近辺でお探しの方は、夕陽ヶ丘ながいクリニックをご利用下さい。

不整脈を疑う症状

不整脈の症状は、「急にドキドキする」「鼓動を強く感じる」「脈が飛んだ感じがする」など胸の不快感として現れるものもあれば、「疲れやすい」、「動くと直ぐに息が切れる」、「ふらつく」、「めまいがする」など、一見心臓とは無関係だと思われる症状が現れることもあります。




高齢者では、脈がゆっくりになる(徐脈)傾向になりやすく、
座ってる時によく寝てるな・・・反応が鈍くなってるな・・・でも年だしなと思うかもしれませんが、案外「脈がゆっくりになるタイプの不整脈」の場合もあります。心臓の拍動が少なくなると頭への血流も少なくなるため、ボーっとしたり、眠くなったりしてしまいます。

話しかけたり、動いたりと刺激を与えていないと、眠ってしまいそうになるなどがあれば不整脈の影響があるかもしれません。
また、特に自覚症状はなくても、血圧測定をすると不整脈を知らせる表示が出て初めて気づくという場合もあります。

不整脈の対処方法

では、動悸など不整脈を疑う症状がでたらどうしたらよいのか、不整脈の対処方法についてお伝えします。

まずは落ちついて、安静を保つようにしましょう。
気を失いそうになる、吐き気や嘔吐してしまうなど症状が悪化してくるようなら、単なる不整脈だけではなく、心臓や脳に何らかの緊急事態が生じているかもしれませんので、周囲に助けを求めましょう。必要があれば救急車を要請してもらいましょう。

症状の悪化を認めなくても数十分続くような場合には、その日のうちに医療機関を受診されることをお薦めします。
また、自然と症状が治まる事の方が多いかと思いますが、症状が治まっても一度は医療機関に相談するようにしましょう。

自分で不整脈を調べる方法

上記の様な症状を自覚したり、これは不整脈かもしれないなと感じた時に、自分で調べる方法をいくつかご紹介します。

一つ目が検脈(けんみゃく)。
手首の動脈をふれて脈拍数や、脈拍のリズムを確認する方法です。
手首が曲がるところと、親指の付け根が交差する場所。また手首の腱が触れられればその親指側を、反対の手の人差し指から薬指の3本で軽くおさえると、拍動を感じることができます。
脈拍数は1分間の脈を数えます。安静にしているのに120回以上ある、逆に40回程度しかない、脈が飛ぶ、脈の間隔がバラバラ。といったことがあれば不整脈かもしれません。


2つ目が、血圧測定です。
血圧測定をすると脈拍も同時に測定されます。機器によりますが、不整脈を感知して教えてくれたり、脈拍数が120回以上、または40回以下などであれば不整脈かもしれません。
繰り返しになりますが、大切なことは自己判断をしないことです。医療機関を受診してしっかりとした検査、診断を行ってもらいましょう。

不整脈の原因

不整脈の原因は多岐にわたります。
冠動脈疾患、心臓弁障害、心不全、先天性心疾患など心臓の病気が原因のものから、他にも以下のような原因で不整脈が起こります。

  • 高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などの生活習慣病
  • ホルモン異常(甲状腺機能亢進症など)
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 貧血
  • 慢性腎不全
  • 電解質異常(高カリウム血症、低カリウム血症、低マグネシウム血症など)
  • 過労、蓄積疲労
  • 心身ストレス
  • 喫煙
  • 飲酒
  • カフェインのとり過ぎ
  • 睡眠不足
  • 薬の副作用や相互作用

不整脈の検査

不整脈を疑った時に、まず最初に行う検査が心電図検査になります。
不整脈は細かく10種類くらいに分類されますが、心電図にてどの不整脈なのかを診断します。またその不整脈がどの程度出ているのかを見るために、24時間心電図を行うこともあります。

不整脈の診断がついたら、不整脈による影響や、不整脈の原因が無いのかなどを判断するために、心臓超音波検査、胸部レントゲン、採血などを組み合わせて治療方針を決定します。

(当院で行う不整脈の検査)

◆12誘導心電図検査

通常の心電図検査です。

◆24時間心電図検査(Heartnote®)

小型のホルター心電計を装着し、長時間(最大7日間)にわたって測定する心電図検査です。

受診時に症状が治まっている場合には、検査で不整脈を断定できないこともあります。その場合、24時間心電図を装着して頂き、不整脈などの以上を検出する検査を行います。

当院が取り入れている新しい心電計Heartnote®は、絆創膏程度の大きさと、重さ12gと、とてもコンパクトで従来のホルター心電計のようなコード類はなく気軽にご使用いただけます

◆心臓超音波検査

心臓弁膜症などの心臓の異常は不整脈を起こす要因となりますので、不整脈の原因治療を考える上で大切な検査です。
特に痛みを伴うことも無く、20分程度の検査時間となります。

◆血液検査

電解質(カリウム、カルシウムなど)異常など不整脈の原因が無いか、またBNPなど不整脈の影響が心臓に及んでいないのかなどを確認し、治療の適応を判断します。

不整脈の種類

主に、①脈が飛ぶタイプ、②ゆっくりになるタイプ、③早くなるタイプにわかれます。

(脈が飛ぶタイプ)

脈が飛ぶタイプの不整脈は、「期外収縮:きがいしゅうしゅく」に伴う症状であることが多いです。
期外収縮は、予定よりも早いタイミングで心臓が収縮してしまうものをいいます

期外収縮では、心臓に血液を十分にためる前に収縮してしまうと空打ち状態になりますので、脈拍としてとらえることができず「脈がとんだ」「抜けた」と感じることがあります。

そして次の心臓の収縮の時に、前回送り出すはずだった血液も一緒に押し出すために、通常よりも多くの血液を一気に押し出すこととなります。この時「ドクン!」と強い拍動を胸や首あたりに感じることがあります。

(徐脈:ゆっくりタイプ)

心臓の動きがゆっくりになる(徐脈)タイプには、洞機能不全症候群(発電所の機能障害)や、房室ブロック(心房と心室との連絡路が途切れてしまう)などの種類があります。
いずれの徐脈性不整脈であっても、症状としてはめまいや、ふらつき、だるさ、倦怠感といったものが現れることが多いです。

(頻脈:はやいタイプ)

頻脈:心臓が早く動いてしまうタイプでは、心房細動や発作性上室性頻拍などがあります。

心房細動は、
心臓が全くバラバラのタイミングで動いてしまいますので、ポンプ機能としては効率の悪いポンプになります。
また、心房は十分に収縮できず震えている状態になり、血液がよどんでしまうことがあります。血液は流れが悪い場所では固まってしまい、血栓を作ってしまうことがあります。
この血栓が心臓から飛び出してしまうと、とても危険です。脳の血管に飛んでしまうと、大きな脳梗塞となり、命を失う原因になったり、そうまではいかないにしても重度の後遺症を残してしまいかねません。

発作性上室性頻拍は、
突然に心臓が早く動き出してしまう不整脈です。1分間に200回前後と全力疾走した時以上に速い動きです。ドキドキといった動悸症状や、ふらつき、気持ち悪さなどを自覚することがあります。
発作性と名前がつくとおり、基本的には自然に止まるのですが、頻拍や症状が持続するようでしたら医療機関にご相談下さい。

不整脈の治療

不整脈の治療は、主に以下の4つがあります。
①生活習慣の見直し
②カテーテルアブレーション
③ペースメーカー植込み
④薬物療法

生活習慣の見直し

良性の不整脈や、緊急性の無いものに関しては、まずは生活習慣の見直しで様子を見ていきます。
喫煙、ストレス、睡眠不足、カフェインの摂りすぎなど生活習慣の乱れは、自律神経系の働きを乱し、不整脈を引き起こしやすくします。

眠る1時間前からはスマートフォンやテレビなどを見ないようにし、十分な睡眠時間をとりましょう。
コーヒーや緑茶を1日に何杯も飲んでいる場合は、1日1杯程度にしてみましょう。ウォーキングなど適度な運動習慣は自律神経系の働きを改善させ、日常のストレスを解消してくれるカタルシス効果も期待できます。

カテーテルアブレーション

脈が速くなるタイプの頻脈性不整脈の治療では、カテーテルアブレーションという治療が選択されることが多くなっています。
足の付け根からカテーテルを心臓の不整脈を起こしている場所までもっていき、不整脈を直接治療する方法です。
1週間程度の入院が必要となりますが、不整脈を根治できる可能性が高い治療となります。

ペースメーカーの植込み

一方で徐脈という脈が遅くなる徐脈性不整脈については、「ふらつき」「めまい」「失神」などの症状がある場合には、ペースメーカーの植込みを行います。
日本では年間5~6万人程度の方が新たにペースメーカーを植え込んでいるそうです。
高齢者では転倒の原因が徐脈性不整脈であることもあります。転倒時の記憶がない、覚えていないなどの訴えがあれば一度不整脈を疑ってみることも大切だと思います。

薬物療法

不整脈を止める、発生を予防する、頻度を減らす、症状を軽減するといったことを目的として、抗不整脈薬が使用されます。
どの薬剤も根本的な治療にはならないため、必要に応じてカテーテルアブレーションが選択されます。

抗不整脈薬には大きくナトリウムチャネル遮断薬、交感神経β受容体遮断薬、カリウムチャネル遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬の4つの種類があり、不整脈の種類や検査の結果を踏まえて、適切な種類の薬を処方します。

最後に、
動悸、息切れ、脈が飛ぶ、ふらつきや失神(意識を失う)などの症状がある方、健康診断で心電図異常を指摘された方で、病院に行こうか迷っておられる方、大阪天王寺・上本町近辺でしたら夕陽ヶ丘ながいクリニックにご相談ください。