目次
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は、「骨が弱くなって骨折しやすくなる病気」です。
- ちょっと転んだだけで足の骨が折れる
- 手をついたら手首の骨が折れた
- くしゃみをしたら肋骨が折れた
- 知らないうちに背骨が折れていた
など、体を支える骨が脆くなると、小さな衝撃でも簡単に骨が折れてしまいます。
体力が低下したご高齢の方が、腰や足の骨を骨折すると、そのまま寝たきりや要介護生活のきっかけになる可能性もあります。
骨粗鬆症の原因
人の骨は、日々新しい骨が作られ(骨形成)、古い骨が壊される(骨破壊)という骨の新陳代謝(骨代謝)が行われており、作られるよりも壊される方に骨代謝が傾くことで骨粗鬆症になります。
骨の強さを表す指標の一つである骨密度は女性の場合、18歳くらいでピークに達し、40歳代半ばまでは、ほぼ一定を維持しますが、 50歳前後から低下していくとされています。
骨密度の低下、骨粗鬆症を進めてしまう要因としては以下のようなものが挙げられます
- 加齢
- 閉経
- 生活習慣
加齢
加齢により、女性ホルモンの分泌量減少、腸でのカルシウム吸収率の悪化、カルシウムの吸収を助けるビタミンDの産生不全、活動性低下など様々な因子が骨を弱くさせてしまいます。
閉経
骨粗鬆症は女性に多い病気です。女性ホルモンの一つである「エストロゲン」は、骨からカルシウムが溶け出すのを抑える働きがあります。閉経を迎えてエストロゲン分泌が減少すると、骨密度が低下しやすくなります。
生活習慣
- 喫煙
- 多量の飲酒
- 運動不足
- 食事(カルシウム不足の食事)
- 過度なダイエット(全体的な栄養不足)
など、年齢や性別以外にも骨を脆くさせてしまいやすい生活習慣があります。年齢や性別など遺伝的なものは変えようがありませんが、生活習慣は変えることができます。心当たりのある方は、お早めに修正されることをお勧めします。
検査
骨粗鬆症に関する検査は大きく分けて2つで、
- 骨密度(骨の量)を調べる
- 骨代謝マーカー(骨の新陳代謝)
を調べる方法があります。
骨密度を調べる検査
骨の量を調べる骨密度検査は、骨に含まれるカルシウムなどの量を測定します。
骨密度検査として当院ではレントゲン撮影による評価方法を採用しております。
骨の新陳代謝の指標を調べる検査
骨の新陳代謝の程度は、採血で調べることが出来ます。
骨は常に破壊(骨吸収)と形成(骨形成)を繰り返していて、合わせて骨代謝と呼ばれます。
骨代謝がどの程度体の中で行われているのかを知ることは、骨粗鬆症の程度や今後の進行を知る上で重要となります。
骨代謝の過程で様々な物質が作られ血中に流れ出てくるので、この物質の量を計測することで、骨吸収(骨の破壊)や骨の形成の程度を知ることができます。この物質が骨代謝マーカーと呼ばれるものです。
今使っている薬の効果があるかどうかを判断するためであったり、治療薬の選択のために、骨代謝マーカーの測定が行われます。骨代謝マーカーには以下のようなものがあります。
①骨形成マーカー
骨形成(骨を作る)で中心的な働きをする骨芽細胞(こつがさいぼう)と呼ばれる細胞が作り出す物質で、以下の様なモノがあります
- OC
- BAP
- P1NP
②骨吸収マーカー
骨吸収(骨を壊す)で中心的な働きをする破骨細胞(はこつさいぼう)が作り出す物質で、以下の様な指標があります
- NTX
- TRAC-5b
使用している薬の特徴に合わせて、測定する骨代謝マーカーを選択します。
◆ 骨吸収を抑える薬 → 骨吸収マーカー
◆ 骨形成を促進する薬 → 骨形成マーカー
治療(内服治療)
骨粗鬆症の治療は主にお薬によって行われますが、大きく以下の2つに大別されます。
- 骨が削られるのを抑える薬(骨吸収抑制作用)
- 骨を作るように促す薬(骨形成促進作用)
①骨が削られるのを抑える薬
骨がけずられるのを抑える薬(骨吸収を抑制する薬)としては
- カルシトニン
- ビスホスホネート剤
- 選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM)
- 抗RANKL抗体
などがあります。
②骨を作るように促す薬
- テリパラチド
- 抗スクレロスチン抗体
などがあります。
その他にも、骨の代謝を助けたり骨の栄養源となるお薬として活性型ビタミンD3、ビタミンK、カルシウムなどがあり、患者さんの状態・症状等により、適した治療薬を医師が選択します。
骨粗鬆症の治療は、効果があらわれるまで長くかかる場合が多いです。骨折をしないためにも、根気よく治療を継続する必要があります。また、途中で治療を止めてしまうと骨折を起こす可能性もあります。
骨粗鬆症予防の食事
骨と言えば「カルシウム」というのはイメージしやすいかと思います。
牛乳やチーズ、骨毎食べられる小魚など、普段食べているのに骨粗鬆症だと言われた・・・という方もいらっしゃると思います。
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版では、カルシウム単体での補給では不十分で、ビタミンやタンパク質などバランス良く栄養を摂取することが推奨されています。
骨粗鬆症の治療時に推奨される食品
- 牛乳、乳製品
- 小魚
- 緑黄色野菜
- 大豆、大豆製品
- 魚類
- キノコ類
- くだもの
毎日全ての食品をそろえることは簡単ではありませんので、1週間くらい幅をみて、できるだけ多くの種類の食品(いつも同じ食事ではなく)を摂るようにしてみましょう。
過剰摂取を避けた方が良い食品
- 加工食品
- コーヒー、紅茶
- アルコール
これらは食べてはいけないものではなく、過剰摂取が問題とされています。
骨折予防の運動
適度な「骨への刺激」が骨密度を保つためには必要とされており、陸上でのウォーキングや筋力トレーニングが骨粗鬆症の進行を予防するために推奨されます。
また、直接の骨折の原因となる「転倒予防」のためにも、筋力強化、バランス感覚強化による「こけない体作り」が重要であると、ガイドラインで示されています。
現在の筋力やバランス感覚を保持する運動として、1日30分程度のウォーキングをお勧めします。
可能であれば、スクワットや片足立ち訓練など、足の筋力やバランス感覚を鍛えるトレーニングも加えてみましょう。
ただ、運動に関しては、可能であれば医師や運動専門科に相談して、ご自身の体力レベルに応じた方法で行う方が安全かつ効果的に実施できると思います。当院ではメディカルフィットネスで具体的な運動サポートを行っておりますので、骨粗鬆症の治療の際は合わせてのご活用もご検討下さい。