人間ドックや健康診断などで行う血液検査や腹部超音波検査などで肝臓機能に異常を指摘されたことはありませんか?

肝臓の病気はたくさんありますが、その中で最も多いのが「脂肪肝」です。

脂肪肝ってただ肝臓に脂肪がついているだけじゃないの? 病気なの?と思われる方もいらっしゃるかと思います。

一種の国民病になりつつある脂肪肝について気になる方は続きをご覧ください

脂肪肝を放っておくと

単に肝臓に脂肪がたまっているだけの場合には、特に困る自覚症状がないことが多いですが、そのまま放置して「肝炎」という状態に進行してしまうと、将来的に肝硬変や肝癌の発症リスクとなります。

肝臓はとても強い臓器なので、健康診断などで定期的に血液検査などを行って数値としてみていないと、肝炎がかなり進行するまで気づかないケースも十分に考えられます。

脂肪肝は何科を受診

肝臓の病気に関しては消化器内科が専門領域になりますが、「非アルコール性の脂肪肝」に関しては一般内科でも診療・治療が可能なケースもあります。

当院も非アルコール性脂肪肝疾患の治療として最も大切な減量をサポートする運動療法をクリニック内で行えるメディカルフィットネスを併設しております。

大阪天王寺区、上本町近辺で脂肪肝の治療をお考えの方は是非。夕陽ケ丘ながいクリニックにご相談下さい。

肝臓の仕事

肝臓の仕事は、タンパク質の合成、解毒作用、胆汁の分泌、血液凝固作用など多岐にわたります。

あらゆる肝臓病の行き着く先としての肝硬変に至ってしまうと、肝臓がこれらの仕事を果たせなくなり、全身に影響を及ぼすようになります。

脂肪肝とは

脂肪肝は、その名前のとおり肝臓に脂肪が過剰に蓄積した状態のことを言います。

肝臓に溜まる脂肪は中性脂肪で、この中性脂肪が肝臓の細胞に30%以上たまった状態を脂肪肝としています。

人間ドック健診では、腹部超音波検査で判定されることが多く、人間ドック健診全体で約30% 1)、3人に1人が脂肪肝と判定されているほどに、珍しいものではなく、ごく一般的な病気であるという事実があります。

1) 笹森典雄:2008年 人間ドック全国集計成績.人間ドック 24 : 901―948, 2009.


なぜ、肝臓に脂肪がたまる?

私たちが食べた物の中に含まれる脂質や糖質は小腸で吸収され、肝臓で中性脂肪がつくられます。この中性脂肪は肝細胞の中に溜め込まれ、必要に応じてエネルギーとして使用されます。

消費エネルギーと摂取エネルギーのバランスが崩れて、摂取カロリーの方が多くなると、余ったエネルギーは中性脂肪として皮下脂肪や内臓脂肪、そして肝臓に蓄えられていきます。

貯金のように、いざという時(食べ物が手に入らない時)に貯金を切り崩して生命維持に必要なエネルギーを供給する、生命維持機能の一つとして重要な働きではあるのですが、食料に困ることの無い現代の日本においては、エネルギー不足よりもエネルギー過多の問題が多く、脂肪肝もその一つです。

脂肪肝の原因

脂肪肝の3大原因と言われるのが、

アルコールの過剰摂取

肥満

糖尿病(糖質の過剰摂取も含む)です

肥満と脂肪肝

肥満症はメタボリックシンドロームの主要な症候で、脂肪細胞に過剰に中性脂肪が蓄積することが大きな要因です。

肥満症があるということは、肝臓にも脂肪が過剰に蓄積する状態であるということなので、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)においても,肥満症は重要な危険因子と考えられます。

肥満と非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の合併率に関しては、BMI 23 kg/m2未満の非肥満者における合併率は10%以下であり,BMI増加に伴って増加し、BMI 30 kg/m2以上の高度肥満者では約80%との報告もあります1)

1)日本肝臓学会編:NASH・NAFLDの診療ガイド2015.

脂肪肝の分類

脂肪肝は、お酒を飲み過ぎたことが原因の「アルコール性脂肪肝疾患」と、お酒以外のもの(肥満、糖尿病など)が原因の「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)」の2種類に分けられます。

非アルコール性と言っても、全くお酒を飲まない方と言うわけでは無く、エタノール換算で1日30g未満、缶ビール500ml程度の飲酒の方も含まれます

非アルコール性脂肪肝疾患

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)のうち80~90%は長い経過をみても脂肪肝のままで、病気はほとんど進行しません。 これをNAFLDの病気を意味する「D(Disease)」を除いてNAFL(ナッフル)といいます。

更に単純性脂肪肝と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に分類されます。ただ脂肪が多いだけから、「肝炎:NASH」の状態へ移行してしまうと、5-10年の経過観察で5-25%の方が肝硬変への進行がみられます。肝硬変へ進行すると元の状態には戻らないため肝不全や肝臓がんを発症していきます。


約40,000人の健診受診者を対象とした荒瀬らの検討では,超音波で診断した非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の頻度は男性で20.8%,女性で12.8%と報告されています1)。

1)荒瀬康司:NAFLD/NASHと生活習慣病.臨牀消化器内科 28 : 435―439, 2013.

脂肪肝の症状は無症状

“沈黙の臓器”と言う言葉をきかれたことがあるのではないでしょうか。人間の臓器は基本的には丈夫に作られており多少の問題や負担にも耐えて、何事も無かったかのよう過ごさせてくれます。

肝臓も例に漏れずとても頑張り屋さんの臓器です。多少の負担がかかってもすぐには症状があらわれません。ですから、脂肪肝では自覚症状は何もない人がほとんどです。

肝炎であるNASHに移行してしまったとしても、初期段階では特別な症状が現れることもないので、自覚症状のみで単なる非アルコール性脂肪肝(NAFL)なのか、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)なのかの区別はできません。

ただし、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が肝硬変に進行すると、栄養障害や代謝障害などにより黄疸や足のむくみ、お腹の張り(腹水による)などの症状が目立つようになり、さらにひどくなると意識障害など進行性に症状が悪化します。

肝臓病の終末像とも考えられる肝硬変になると、いくら再生能力の高い肝臓でも元には戻れませんので肝移植しか根治が望めなくなります。肝硬変の原因となる、NASH)やNAFLを含めた非アルコール性脂肪肝疾患の改善、発症予防がとても重要です

脂肪肝の検査・診断

血液検査

ALT(GPT)、AST(GOT)

肝臓に何らかのダメージが加わって細胞が破壊されると、肝細胞から血液中にこのASTとALTが大量に放出されるため、血中濃度が上昇します。
なお、ALTの多くは肝臓の細胞に存在しますが、ASTは肝臓以外の細胞にも存在するため、ALTが正常でASTのみが上昇している場合は肝臓以外の問題が考えられます。
一方、ALTの上昇の方が大きい場合は、脂肪肝、アルコール性肝炎など肝臓の病気の可能性がより考えられます。


γ-GT 

肝臓の解毒作用に関係する酵素で、とくに過度の飲酒によるアルコール性肝障害で値が上昇します。また、脂肪細胞から放出される炎症性サイトカインという物質などにより肝臓細胞が障害を受けることでも上昇します。


ChE(コリンエステラーゼ)

肝臓で作られる酵素のひとつで、肝機能が低下すると値が低下します。また、脂質代謝にも関わっているため、栄養過多で起こる脂肪肝や脂質異常症では、値が上昇します。


TG(中性脂肪)

脂肪肝の原因であるTGの量を測定します。脂肪肝の原因であるTGの量を測定します。血液中を流れる中性脂肪には主に2つの供給源があります。1つは小腸で、食べた物に含まれる脂肪が消化吸収されて中性脂肪になります。もう1つは肝臓で、脂肪酸とグリセロール(糖質)から新たに中性脂肪が作られます

腹部超音波検査

超音波画像では脂肪の部分が白っぽく輝いて見えます。

腹部CT

肝生検

画像検査や血液検査だけでは脂肪肝であることがわかるだけです。
単純な脂肪肝か、炎症を起こしている脂肪性肝炎(NASH)か判断が必要と判断される場合に、細い針を肝臓へ刺して肝臓の組織の一部を採取して調べる肝生検という検査を行うことがあります。

脂肪肝の治療

非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)に対して、保険適応を有するお薬は今のところありません。
そのため、脂肪肝の治療は原則として、食事療法と運動療法になります。

食事療法

・飲酒を控える
・脂質を控える
揚げもの、バターやマーガリン、スナック菓子など)はカロリー過多になりやすく肝臓への脂肪蓄積を促します
・炭水化物を控える
お米、麺類、パン、など主食となるものです。糖質も余分なものは中性脂肪に変換して脂肪細胞へ蓄積されます。
・炭水化物・タンパク質・脂質を含む栄養バランスの摂れた食事を心がける
・間食をしない
・肥満がある場合は、消費エネルギーよりも摂取エネルギーが少なくなるように

運動療法

・1日30分以上、週の合計が150分以上となるように運動を取り入れる
・運動種目は、ウォーキング(陸上、水中)、自転車運動、水泳、ダンスなど取り組み安やすいもの
・運動のきつさとしては、30分楽に運動が継続できるような軽度なものから開始します
・スクワットなど大きな筋肉を鍛える、筋力トレーニングを併用する

このように脂肪肝の治療は、食事や運動といった脂肪肝の原因となる生活習慣病の見直しを行います。また、当院では、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD/NASH)の治療として最も大切な減量をサポートする運動療法をクリニック内で行えるメディカルフィットネスを併設しております。大阪天王寺区、上本町近辺で脂肪肝の治療をお考えの方は是非。夕陽ケ丘ながいクリニックにご相談下さい。一般的な内科治療により数値が安定しない場合や専門医の診断、更なる治療が必要と考えられる場合は専門の医療機関に紹介させていただきます。