新型コロナウイルス感染症の流行で改めて肺炎の怖さに気づかれた人も多いのではないでしょうか。
特に65歳以上の方や持病のある方は、ウイルスや細菌への抵抗力・免疫力が落ちているため、肺炎にかかりやすく重症化しやすいとされています。
肺炎かどうかは医療機関で検査と診断を受ける必要がありますが、医療機関に相談していただくには、みなさまが「これは肺炎の症状なんじゃないか?」と疑いをもって頂くことも重要です。
病気は知ることで予防できたり、被害を小さくできる可能性もあります。
以下に肺炎についてまとめて見ましたので、ぜひご活用下さい。
目次
肺炎を疑う症状と病院に行く目安
◆顔色が明らかに悪い、唇が紫色
◆安静にしていても息苦しさを感じる
◆少し動いただけでも息苦しい
◆急に息苦しさ、呼吸のしづらさを感じるようになった
◆肩で息をしている、息が荒い
◆呼吸数が多い(毎分20回以上)
◆ゼーゼーし始める
◆胸の痛みがある
◆血圧が下がる
◆意識障害がある
上記の様な症状は、肺炎や肺炎の重症化を強く疑いますので、呼吸器内科または内科を受診して下さい。
一方で、肺炎の初期症状は一般的なかぜ症状と似ていて、肺炎と気づかないこともあります。
また、高齢者では、「なんとなく食欲がない、元気がない」など症状がわかりづらい場合が多いともいわれます。
はじめは「かぜかな?」と思っても、症状が持続する場合や、3日以上症状が続く、日に日に症状が悪くなってくる場合には、単なるかぜではなく肺炎になっている可能性が考えられます。
肺炎が進行すると
肺炎が進行するとの問題は、①低酸素状態になること、②原因菌などが全身にまわってしまうことの主に2つに大別して考えることができます。
①低酸素状態に伴う弊害
強い息苦しさ、不整脈の発症、意識障害、昏睡などが現れます
②原因菌が全身にまわることの弊害
肺で増殖した菌などが全身にまわることで、敗血症(はいけつしょう)に陥ります
敗血症では、全身の血管が広がってしまったり、血液のなかの水分が血管の外の漏れ出しやすくなったりなどにより急激な血圧低下をもたらしショック状態となります。
また、血の塊があちこちにできてしまうDIC(播種性血管内凝固症候群)と呼ばれる状態におちいると、多臓器不全を引き起こし命の危険が迫ります
肺炎の原因と種類
肺炎は原因となる病原体によりいくつかの種類に分けられます
◆細菌性肺炎・・・肺炎球菌などの細菌が原因
◆ウイルス性肺炎・・・インフルエンザウイルス、コロナウイルスなどが原因
◆非定型肺炎・・・マイコプラズマなどの微生物が原因
◆肺真菌症・・・カビ菌が原因
◆誤嚥性肺炎・・・唾液や食べ物が気管に入ることが原因
◆薬剤性肺炎・・・内服薬の副作用として現れる
かぜと肺炎の違い
一般的なかぜは、上気道といって、鼻、口、喉の部分に炎症が起きることで、鼻づまりや咳、喉の痛みといった症状が現れますが、肺の炎症は起きないため、呼吸症状などは基本的には認めないか、あっても軽微なものになります。
一方の肺炎は、気道の一番奥の肺胞に炎症が起きるものを言います。肺胞は酸素を取り込む場所ですので、低酸素状態に伴う強い息切れ、胸の痛み、意識障害などより重篤な症状が現れます。
肺炎を疑ったときの検査
肺炎の検査は、①肺炎であるかを見極める検査、②肺炎の原因を特定する検査にわかれます。
以下の検査を行い、肺炎の診断、重症度の見極め、必要な治療方法の選択と治療が進みます
①肺炎の重症度を見極める検査
◆聴診
聴診器を胸に当てると「ゴロゴロ」といったような音:水泡音が聴かれることがあります。
これは肺が炎症により水浸しになっていると聴かれる音です。
◆胸部レントゲン撮影
肺炎の場合、X線やCTで胸の画像を撮ると、「浸潤影」「すりガラス様陰影」と呼ばれる白っぽい画像が見られます
◆胸部CT
CT検査はレントゲン検査と同じくX線を利用して画像化する検査です。
胸部レントゲンが1方向からX線を照射するため臓器の重なりなどで死角ができてしまうのですが、CT検査では多方向からX線を照射して画像を撮影するので、3次元的な画像が得られ、より精密な診断が行えます
◆血液検査
血液中のCRP、白血球、赤沈は炎症や細菌感染があると数値が高くなる項目です。
◆血中酸素濃度
動脈血を採取して測定する場合や、簡易的にサチュレーションモニターにより指先で測定する場合があります
②肺炎の原因を特定する検査
原因(細菌、ウイルス、それ以外の病原微生物)によって、治療に使うお薬が変わります
◆尿検査
尿中抗原検査は、レジオネラ菌と肺炎球菌という肺炎を起こしやすい菌の特定に役立ちます
◆喀痰検査
痰を採取して、原因菌を推定する検査です。
結果が出るまで数時間~数日間かかります。
◆抗原検査/PCR検査
双方ともに、検査したいウイルスの抗体を用いてウイルスが持つ特有のタンパク質(抗原)を検出する検査方法です。
鼻の奥の粘膜を採取したり、唾液を採取して検査にかけるものがあります。
肺炎の治療
肺炎では、安静と水分補給を基本として、①対処療法、②原因療法が同時に行われます。
各種検査などにより、高度な脱水や、低酸素状態、心臓などに重度な障害が起きている場合には入院して治療するケースもあります
①肺炎の対処療法
症状を緩和させるために行う治療です。
◆咳止め
◆痰切り
◆解熱剤
◆点滴(脱水状態に対して)
◆酸素投与(低酸素血症に対して)
②肺炎の原因療法
◆抗生物質
◆抗ウイルス薬
肺炎の予防
◆ワクチン接種
65歳以上の肺炎で最も頻度の高い病原菌は肺炎球菌とされています。
この肺炎球菌に対しては、ワクチンが開発されており、23価ワクチン(ニューモバックス)は当院でも接種がかのうです。1回接種すると、およそ5年間効果が持続するとされていますが、肺炎球菌のすべての種類をカバーできているわけではありませんので、100%の予防効果はなく、次項の感染症予防なども併せて実施していただくことが望まれます。
◆基本的な感染症予防対策
新型コロナウイルスの感染予防と同じく、手洗い、3密を避けるなど基本的な感染症予防が推奨されます
◆免疫機能や体力を下げない
どのような病気も、完璧に予防できるものはありません。
十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動、禁煙など一般的な健康増進の取り組みを継続しておくことで、肺炎になったとしても乗り切れる体力、免疫力を維持しておくことも大切だと思います
最後に、
一般的なかぜと、肺炎は全く別ものとお考え下さい。
かぜと思っていたけど「なかなか治らない」「どんどん症状がひどくなってくる」「息苦しい」「むねがいたい」「血圧が下がるなど気になる症状へと変化してきた場合には早めに医療機関、大阪天王寺・上本町近辺でしたら夕陽ヶ丘ながいクリニックへご相談下さい。