インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原とする気道(鼻、喉、気管支など)感染症です。
いわゆる「風邪」の一種ではありますが、毎年数千例の死亡者を出す重症化しやすい疾患として「一般の風邪」とは分けて考えておかなければいけない風邪です。
季節性インフルエンザは日本では毎年11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1~3月頃に患者数が増加、4~5月にかけて減少していくパターンを示しますが、2023年は秋口からの感染者数増加を認めており、例年より早い流行期に入ったことがうかがえます。
発熱外来においても、新型コロナウイルス陽性者よりもインフルエンザ陽性の方が多くなる日もあります。大阪天王寺区、上本町周辺で発熱外来をお探しの方は夕陽ヶ丘ながいクリニックへご相談下さい。
インフルエンザついて、詳しく知りたいと言う方は続きをご覧頂き、感染予防、早期治療にお役立て下されば幸いです。
目次
インフルエンザの型
よくインフルエンザA型、B型と言った言葉を耳にするかと思います。
インフルエンザには主にはA,B,Cの3型があり、流行的な広がりを見せるのはA型とB型とされています。
インフルエンザA型
他の型と比べて流行しやすく、症状が強いのが特徴と言われています。
また変異も激しいと言われており、毎年新型のウイルスが誕生していると言われています。
インフルエンザウイルスの表面には、スパイク蛋白というタンパク質が存在しています。A型インフルエンザウイルスにはHA(ヘマグルチニン)とNA(ノイラミニダーゼ)の2種類のスパイク蛋白が存在しています。そしてHAには16種類、NAには9種類があり、この組み合わせにより「H1N1~H16N9」の144種類が存在することになります。
Aソ連型やA香港型など耳にされたことがあるのではないでしょうか?これはHAとNAのスパイクタンパク質の組み合わせによる通称ということになります。ワクチンが外れるというのは、この型の流行予測が困難であることが一因です。
A型インフルエンザは、人畜(人、鳥、豚・・・)などに広く感染します。鳥インフルエンザ、新型インフルエンザと呼ばれる大流行を引き起こすインフルエンザウイルスは、A型のウイルスとされています。
インフルエンザB型
B型インフルエンザにも、HA(ヘマグルチニン)とNA(ノイラミニダーゼ)のスパイク蛋白が存在していますが、それぞれ1種類しかありません。また、A型と異なり、人にしか感染しないとされています。
1種類しかないので、1度感染すると抗体ができるので再感染しにくい、またワクチンの予測が立てやすいというのも特徴です。
何度もかかる理由
去年もインフルエンザにかかったのに今年もかかっ・・・
ワクチン接種をしているのにインフルエンザにかかった・・・
前述のとおり、インフルエンザA型には約140種類もの型が存在することでワクチンの予想が外れることがある。また、インフルエンザウイルスの変異速度はとてつもないことがその理由として挙げられています。
体内に入ったインフルエンザウイルスは、複製を作る段階で変異を起こします。小さな変異であればよいのですが、「ガラケーからスマホ」のようなフルモデルチェンジが時折起きると、誰も抗体をもっていないために世界的大流行の要因となります。新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じく風邪ウイルスの1種ですが、だれも抗体を持っていなかった(もちろんワクチンも無い)為に世界的大流行に至ってしまいました。
また、1年に2度インフルエンザにかかる場合もあります。
A型の別の型に感染する、または先にA型にかかり時間をおいてB型に感染することなどが考えられます。
インフルエンザの潜伏期間
A型またはB型インフルエンザウイルスの感染を受けてから1~3日間ほどの潜伏期間があるとされています
インフルエンザの症状
- 発熱(通常38℃以上の高熱)
- 頭痛
- 全身倦怠感
- 筋肉痛や関節痛
- 咳
- 鼻みず
などの症状が現れ、おおよそ1週間ほどで軽快するのが典型的なインフルエンザとされていますが、一般的な風邪症状に比べて症状が強いことが特徴です。
乳幼児、妊婦、高齢者や基礎疾患(心臓疾患、呼吸器疾患、糖尿病、腎臓疾患など)を持つ方、免疫不全などのある方では、基礎疾患の悪化や肺炎などを合併しやすいことが知られています。
インフルエンザはうつる?
人から人へ感染していきます。
感染経路としては、咳やくしゃみとともに放出されたウイルスを別の誰かが吸い込むことによって発症する「飛沫感染」と、ウイルスが付着したものをふれた後に鼻や口など粘膜に触れることで感染する「接触感染」があります。
そのため、咳症状がある場合には他人との接触を控えたりマスクをするなどウイルスを飛び散らせないようにすること。またどこにインフルエンザウイルスが付着しているかわからないので、手洗いをすることでウイルスを体に入れないことが感染予防として重要と考えられます。
特に次の持病がある方は、新型コロナウイルス感染症予防対策と同様の手洗い、換気、人混みを避けるなどをして感染しないように注意してください。
インフルエンザの検査・診断
一般的に行われているのが、インフルエンザ抗原を検出する迅速診断法です。鼻の奥の鼻粘膜の拭い液を使用し、約15分で診断ができます。
注意点としては、体内のウイルス量が少ない状態では陰性に出ることがある点です。 発熱や咽頭痛などの症状が12時間~24時間すると体内のウイルス量が十分に増えるとされています。
※当院では、インフルエンザ・コロナウイルスの同時検査キットを使用しています。
インフルエンザの治療
◆抗インフルエンザウイルス薬
オセルタミビル(タミフル)
カプセル薬です。成人の場合は、1日2回を5日間飲みきり。
ザナミビル(リレンザ)
吸入薬です。成人の場合、1日2回を5日間吸入します。
ラニナミビル(イナビル
吸入薬です。確実に吸入ができれば、1回の治療で完結。
バロキサビル(ゾフルーザ)
錠剤です。エンドヌクレアーゼ阻害薬という分類で、1回の服用で治療が完結
上記のように多種の薬剤がありますが、年齢や重症度、投与経路の点を考慮して薬剤が選択されます。
◆対処療法としての内服治療
・解熱鎮痛薬
・咳止め
・痰切り
すでに何かしらの治療薬を内服されている場合には、市販のお薬を自己判断で購入し内服するのはリスクを伴います。可能であれば医療機関を受診されること、難しければ少なくとも薬剤師のいるドラッグストアでご相談されてから購入することをおすすめします。
◆自分で出来ること
脱水の予防(こまめな水分摂取)
消化吸収の良い食事
卵がゆ、果物、ゼリーなどがすすめられますが、インフルエンザにかかった時は腸も弱っているので、無理に食事をとる必要はありません。数日間なら体に蓄えている脂肪がエネルギーを生み出してくれます。ただし脱水は避けなければいけませんので、胃腸を刺激しないよう、少量ずつこまめに摂取することをお勧めします。その際は、少しでもビタミンやミネラル、糖分を補給できるようにスポーツドリンクや経口補水液、100%果汁のジュースなどの使用も選択肢の一つです。
高熱による症状緩和
タオルにくるんだ氷嚢や保冷剤などを脇や股、首など大きな血管の通る場所にあてて冷やします。凍傷が起きる可能性があるので、保冷剤を直接皮膚に当てないよう、また長時間の使用を避ける、皮膚感覚が無くなる前に一旦外すなどご注意下さい
インフルエンザの予防
◆インフルエンザワクチン接種
インフルエンザワクチンの接種は感染予防に有効な方法ですが、残念ながらワクチンによってインフルエンザに全くかからなくなるわけではありません。ワクチンの目的としては、感染後の発症の可能性を低減させ、発症した場合の重症化を防ぐことにあります。
◆体調管理
・過労を避ける
・十分な睡眠をとる
・栄養バランスの良い食事をとる
・適度な運動習慣(過度な運動は免疫力を低下させる恐れがあります)
◆一般的な感染予防対策
・手洗い
・換気
・人混みを避ける
・咳エチケット(マスクの装着など)