こんにちは、夕陽ヶ丘ながいクリニックです。

寒さもいよいよ底を迎えてきました。
インフルエンザやコロナウイルス感染者も増減の波を繰り返しつつ流行しておりますので、引き続き手洗い、換気、マスク着用など基本的な感染症予防対策の実施をお勧めいたします。

さて今回は患者さんからよく頂く質問として、「血圧が下がっても薬がやめられないの?」があります。

回答としては、「止められる方、止めない方がいい方がいる」というのが回答になりますが、もう少し詳しくご説明させて頂きます。ご興味ある方は続きをご覧下さい。

高血圧でお薬を使う理由について

高血圧の治療でお薬が処方されることについて、皆様はどう感じておられるでしょうか?

  • 出来れば薬は使いたくない
  • 副作用が怖い
  • 薬を飲んだら一生飲まなきゃいけないんじゃないか
  • 無理矢理血圧を下げてもいいのか?
  • 「いい血圧ですね」と言われるのに薬は減らないのは何故?

といったお薬に関する疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この疑問を解消するために、そもそも高血圧の治療の本来の狙いが何なのかについてお伝え致します。

高血圧治療の目的は「血圧を下げることではなく」、「高血圧が持続することによる、合併症発症リスクを減らすこと」にあると考えています。

高血圧が引き起こす合併症には、

  • 心臓の血管が詰まって心臓の筋肉が窒息状態となる心筋梗塞
  • 心不全
  • 脳卒中
  • 慢性腎臓病

など、いずれの合併症も長期間血管や心臓に強い圧力がかかることで、血管の機能低下や炎症といった動脈硬化が進行する事が原因となります。

厄介なのは、この動脈硬化や合併症の進行は、自覚症状に乏しく、明らかに困る症状として自覚した時には後戻りできないレベルに進行しているということです。

高血圧と診断された時点で、ある程度の動脈硬化が進行していると考えられ、人によっては既に腎臓の機能低下や、心肥大、血管狭窄などの合併症が静かに進行していることもあります。

高血圧の治療は、このような高血圧に伴う合併症の発症を予防する事、またすでに合併症が現れている場合には、その進行速度を緩めることにあります。

そこで血圧を下げるお薬もその「手段の一つ」として用いられることになります。

もちろん、お薬には血圧を下げる効果がありますが、実はそれだけではありません。
高血圧が持続することでダメージを受けている腎臓や心臓を保護する(腎不全リスクを軽減させることや、心不全や心筋梗塞の発症リスクを減少させる)ことが認められている薬もあります。

このように、高血圧の薬は今目の前の高血圧に対する「治療薬」でもあり、将来起きる可能性のある合併症に対する「予防薬」でもあるとう認識が大切です。

血圧が下がったらお薬を止めていいのか

次は、血圧が下がったらお薬をやめてもいいのかということについてです。

実際に、食事や運動、喫煙といった血圧を上げる生活習慣の見直しにより、お薬が減ったり不要になることもあります。

ただ、お薬の種類によっては急に内服を中断してしまうと、離脱症状が現れる事もあるので、医師の指示のもとで減薬、中止とすすめることが大切です。

また、血圧を下げるお薬には、腎臓や心臓の負担を減らす作用があるので、血圧が良好に管理出来ていても、合併症の発症及び進行リスクを軽減させるために、内服を継続することが望ましい場合もあります。

例えば、ここに高血圧で治療を行っているAさんBさんがいて、
Aさんは、高血圧であった期間が3年程で、合併症も見られませんでした。
一方のBさんは、10年以上前に高血圧と診断されていましたが、最近まで未治療のままでした。
合併症としては腎臓の機能低下や心筋肥大が認められました。

お二人とも治療のかいあって120/60という良好な血圧の管理状態になったとします。

Aさんは高血圧の期間が短く腎臓や心臓にも影響が及んではいませんでしたので、お薬を中止し食事と運動で様子をみることになりました。

一方のBさんの方は長期間の高血圧にさらされたことにより、心臓や腎臓に既に影響が及んでいることもあり、心臓や腎臓保護作用も認められている降圧薬の継続が望ましいと考えます。

このように、血圧の値だけではお薬の継続や中止は決められない、合併症やその他の基礎疾患との兼ね合いも考慮して、お薬の調整を考えていくことが将来的な健康をを考える上でとても大切だと考えています。

暖かい季節や夏場になると、冬に比べて血圧が下がってくる方もいらっしゃるかと思います。

正常値になったし、薬を止めてましたと患者さんから報告を頂くことも少なくありません。

単に血圧を下げることが目的ではなく、心臓や腎臓といった重要な臓器の合併症リスクを軽減させる狙いがあること、またそれは「今現在の血圧の値」だけで判断できるものではないということをご理解下されば幸いです。

また、私たち医療従事者の説明不足が、皆様のお薬に対する不安や疑問を募らせていることも反省点だと思っています。

医療側のアプローチだけでは病気と上手に付き合っていくには不十分な時代となっております。

皆様のご協力を得ることで、良好な健康状態を維持し、当たり前の生活を守っていきたいと考えておりますので、治療内容にご不明な点がございましたら、お話頂ければ幸いです。

血圧が高い、高血圧の指摘を受けたなど、血圧に関することでお困りの方は、合併症が現れてしまう前なら薬を止められる可能性が高くなります。できるだけ早めに医療機関にご相談されることをおすすめします。大阪天王寺、上本町近辺でしたら夕陽ヶ丘ながいクリニックもご検討下さい。