
Apple Watchなどのスマートウォッチで「心電図に異常の可能性があります」「心房細動の兆候が検出されました」といった通知を受けて、心臓の病院に行くべきかどうか判断に迷った経験はないでしょうか?
このコラムでは、「スマートウォッチで心電図異常と出たときに、どこまで気にすべきか」「病院に行くべきかどうかの目安」「相談先はどこがいいのか」など、受診の判断に役立つ情報を循環器専門医の視点解説させて頂きます。
目次
スマートウォッチの心電図、どこまで正確?何がわかる?
スマートウォッチに搭載されている「心電図機能」は、主に心房細動(AF)と呼ばれる不整脈の検出を目的に設計されています。
Apple Watchをはじめとする多くの製品では、30秒ほどの簡易的な心電図記録を行い、自動的に「異常あり/正常/判断不能」などの結果を表示します。
この技術は、FDA(アメリカ食品医薬品局)で認可され、一定の信頼性があると評価されています。
ただし、病院で行う12誘導心電図と違い、1つの電極で測る単誘導のため、わかることは限られています。また、接触不良があったりすると、誤検出や判定不能になることもあるため、「正常」と出ても安心しすぎないことが大切です。
とはいえ、症状がなくても心房細動が見つかることがあり、健康なうちに異常に気づける貴重な手段として、スマートウォッチは非常に有用なツールです。医療機関と組み合わせて使うことで、さらに安心・正確な判断が可能になります。
「心電図異常」と出たら、病院に行くべき?受診の目安とは
結論から言うと、「症状の有無」と「通知の頻度」が判断材料になります。
次のような症状がある方は、「早めの受診」をおすすめします。
- 急に脈が速くなったり、不規則に打つ
- 動悸(ドキドキ、バクバク、ドキッ・・・など)を感じる
- 胸の違和感、圧迫感がある
- めまい、立ちくらみ、ふらつきがある
- 意識が遠のく感じがした、実際に倒れたことがある
こうした症状がある場合は、心房細動などの不整脈の可能性があり、放置すると血栓による脳梗塞など重大なリスクにつながることがあります。なるべく早く、循環器内科やかかりつけ医を受診しましょう。
症状がまったくない場合でも、油断は禁物です。
特に、以下のようなケースでは医療機関への相談を検討してください。
- 数日にわたって繰り返し「異常」の通知が出ている
- 以前に不整脈を指摘されたことが有る
- 高血圧・糖尿病など、心臓病のリスク因子がある
- ご家族に心房細動や脳梗塞の既往がある
スマートウォッチの通知は、「心臓からの早期サイン」かもしれません。
何もなければそれで安心ですし、万が一異常が隠れていれば、早期発見に繋がります。
どこを受診すればいい?スマートウォッチの記録は役立つ?
不整脈の検査・診断・治療に関しては、基本的には「循環器内科」または「内科」で対応可能です。
「こんなことで相談してもいいのかな?」と思わず、まずはお気軽にご相談ください。
特に初診の場合や症状がある場合は、以下の準備をしておくとスムーズです。
💡受診時に持っていくと良いもの
- スマートウォッチに記録された心電図のスクリーンショットやPDF
- 通知が出た日時や回数のメモ
- 症状の有無、あった場合はその内容とタイミング
- 既往歴や現在の服薬内容がわかるもの
スマートウォッチの記録は、医師にとって「症状があったときの客観的なデータ」として非常に参考になります。
病院での検査では、症状が出ていないタイミングだと異常が見つからないこともありますが、機器の記録があれば、診断や治療方針の判断材料になることがあります。
スマートウォッチの限界
スマートウォッチによる心電図記録は、医療機関で行われる12誘導心電図検査や24時間心電図検査(ホルター心電図)とは異なります。
スマートウォッチで「異常なし」と表示されても、“すべての心臓の異常がない”という意味ではありません。
スマートウォッチが検知できるのは、主に心房細動など一部の不整脈に限られます。
心臓の病気は不整脈だけではありません。
たとえば、以下のような疾患は、スマートウォッチでは原則として検出できません。
- 狭心症や心筋梗塞(心臓の血管が詰まる病気)
- 心筋症(心筋の異常による心機能低下)
- 心臓弁膜症(弁の異常による血流障害)
- 一時的な徐脈や頻脈、期外収縮などの短時間の不整脈
特に注意したいのは、胸の痛みや圧迫感、息苦しさといった症状があるのに、「異常なし」と表示されたことで安心してしまうケースです。
これは非常に危険な自己判断で、場合によっては救急対応が必要な疾患を見逃してしまうリスクがあります。
繰り返しになりますが…
- 症状がある場合は、スマートウォッチの表示に関係なく受診してください。
- 「異常なし=病気ではない」ではありません。
- 医療機関での診察・検査で正確な診断を受けましょう
スマートウォッチはあくまでも「異常を見つける可能性のあるツール」であり、「異常がないことを証明するもの」ではありません。
体からのサインを見逃さず、「おかしいな」と思ったときには、必ず医療機関に相談されることをおすすめします
まとめ
スマートウォッチで「心電図に異常の可能性があります」と表示されたとき、不安になる一方で、「自覚症状もないし、様子を見ようかな」と様子見してしまうこともあるかもしれません。
こんな方はぜひ一度ご相談ください
- スマートウォッチで異常の通知が出たことがある
- 胸の違和感、動悸、息切れなど気になる症状がある
- 心疾患の家族歴がある、生活習慣病を抱えている など
スマートウォッチが検知できる異常は限られていますが、
同時に身体からの“かすかなサイン”に気づかせてくれる頼もしいツールでもあります。
そのサインを見逃さず、「大丈夫かどうか確かめに行く」ことが、ご自身の安心と健康につながるのではないでしょうか。
「何もなかったらそれでいい」――そんな気持ちで、まずは気軽にご相談ください
大阪、天王寺、上本町、谷町線沿線で循環器内科をお探しの方は、夕陽ケ丘ながいクリニックもご検討下さい。不整脈の精密検査、必要に応じて専門医療機関へのご紹介もさせていただきます。
最後までご覧頂きありがとうございました。
※文責:夕陽が丘ながいクリニック 院長 永井宏幸