
皆さんこんにちは、心臓リハビリテーション指導士の東野です。
いつも当院をご利用下さりありがとうございます。
2025年5月、上皇さまが「心筋虚血の疑い」で検査入院されたというニュースが報じられました。
このニュースをきっかけに、「心筋虚血って何?」と患者さんからご質問いただくことが増えました。
今回はこれを機に「心筋虚血の意味するところ」「症状があるのか?」など心筋虚血と高齢者の心臓病について記してみようかと思います。
目次
「心筋虚血」とはどんな病気?
「心筋虚血(しんきんきょけつ)」とは、心臓の筋肉(心筋)に十分な血液(=酸素と栄養)が届かなくなる状態のことです。
主な原因は、心臓に血液を送る「冠動脈(かんどうみゃく)」が動脈硬化(どうみゃくこうか)などで狭くなったり詰まったりすることです。
血流不足が一時的で軽い場合には「狭心症(きょうしんしょう)」として胸の症状(圧迫感、痛みなど)が出ますが、血管が完全に詰まってしまうと「心筋梗塞(しきんこうそく)」になり、命にかかわる事態に進行します。
狭心症は酸素が不足した「酸欠状態」、心筋梗塞は酸素が途絶えた「窒息状態」と考えればイメージしやすいでしょうか。
心筋虚血は心臓のトラブルの“サイン”であり、早期に見つけて対応し、深刻な状態になることを可能な限り予防することが大切です
症状がないこともある?
心臓のトラブルで症状が現れないことがあるのか不思議じゃないでしょうか?
でも実際は、あります。
「無症候性心筋虚血」といって目立った症状を自覚しない心筋虚血のことを言います。
胸の痛みや圧迫感などの症状を感じにくくなる要因はいくつかあります。
1つは高齢であることです。
年齢とともに神経の感度が鈍くなったり、「加齢による違和感」として軽視してしまうこともあります。
また、あまり活動的でない場合も、心臓が酸欠になっている狭心症症状が出づらくなります。
その他、糖尿病を患っておられる方にも無症候性心筋虚血が多いと言われています。
糖尿病は、合併症として神経症が起きます。
神経症の程度にもよりますが、軽い痛みを感じにくくなり、痛いと気づいたときには深刻な状態になっていることもあります。
このように、高齢であることや糖尿病を患っている方は、痛みという自覚症状があてにならなくなりますので、検査など客観的な指標を用いることが病気の発見に重要となってきます。
つまりは、「定期的に受診しましょう」ということになります。
特にすでに心臓病の治療を受けられている場合は、最低でも月に1度の診察がよいのではないかなと思います。
病状が安定して症状がなければ、面倒だし2,3ヶ月後でいいよと思われるかもしれませんが、症状がなく進行する場合もありますので、「変わりないことを」客観的に判断してもらうことは大切かなと思います。
心筋虚血が疑われたとき、どんな検査をする?
● 安静時・運動負荷心電図検査
心筋虚血になると、心臓を流れる電気信号に異常が起きることがあります。
心電図検査は、心臓を流れる電気信号をとらえる検査です。
一般的には安静にして行なう検査ですが、場合によっては運動を行なっている最中(心臓に負荷をかけたとき)の変化を見ることもあります。
● 心臓エコー検査(心臓超音波検査)
超音波を使った画像診断機器を用いて、心臓の動きを観察します。
資金虚血になった心臓は、部分的に動きが悪くなることがあるので、エコー画像で確認していきます。
● 心筋シンチグラフィ(核医学検査)
微量の放射性薬剤を使って、心筋にどれだけ血液が届いているかを画像で見る検査です。
無症状の心筋虚血を見つけやすい検査の一つです。
●心臓CT検査
画像診断機器であるCT装置を使って心臓の血管を写しだす検査です。
検査時には造影剤を血管に注入して心臓の血管を撮影し、冠動脈の狭窄や石灰化、動脈硬化の程度などを評価します。
心電図や、心臓エコーとは異なり、心臓の血管そのものを評価できる検査です。
●心臓カテーテル検査(冠動脈造影)
より詳しく調べたいときには、心臓の血管の形を直接見る心臓カテーテル検査が行われることもありますが、CT検査に比べて体への負担も大きく、基本的に入院(1泊)を必要とします。
近年では、CTによる画像抽出技術が進んだこともあり、いきなり心臓カテーテル検査を行う事は少なくなっています。
ほんとに無症状?
心筋虚血の症状は様々です。
無症状と思っていても、ふりかえると以下の様ような症状を自覚していたとうケースもあります。
- 疲れ易くなった
- 少し動いただけで息があがるようになった
- 外出が億劫になった
- 胃もたれや胸やけが続く
- 奥歯の痛みが持続する
- 肩が重い状態が持続する
など、「年のせい」「運動してないし」など自分が納得できる理由をつけてしまわれることもよく経験しますので、お気をつけ下さい。
最後に
心筋虚血は、体の中で静かに進むこともあるため、気づいたときには大きな問題になっていることもあります。
でも逆に、早めに見つかれば対応の余地が大きいのもこの病気の特徴です。
胸の不快感以外に、上記の様な症状がみられれば一度かかりつけ医にご相談下さい。
大阪天王寺、上本町近辺で心筋虚血のご相談の場合は、夕陽ヶ丘ながいクリニックもご検討頂ければ幸いです。