前回のコラムでは、がんと循環器(心臓・血管病)との関係性についてお伝えしました。

近年では、がん患者の心臓を守るために、循環器医師との連携が重要性であるとの認識も広まってきつつあります。

どのようなアプローチがあるのでしょうか?

その答えの一つが「心臓リハビリテーション」です。

がん治療中は心臓や血管に障害が及びます

抗癌剤や放射線療法により、心臓や血管は障害を受けることがあります。
心臓のポンプ機能が低下して心不全になったり、心臓を栄養する血管が詰まってしまう心筋梗塞を発症することもあります。

がん治療前に、高血圧や糖尿病、肥満、運動不足など心臓病リスクがあった方では、心臓病の発症リスクは高くなると考えられています。

また、ただでさえがん治療で体力が低下している状態で心臓病を発症してしまうと、体の機能はさらに低下して生活の質をおとすことになりかねません。

がんリハビリテーション

がんリハビリテーションとは、がんの治療中や治療後に生じる体力の低下や痛み、倦怠感、気持ちの落ち込みなどを軽減し、生活の質(QOL)を向上させることを狙いとします。

一般的な運動療法に加え、がんの種類や治療法によって異なる後遺症に対して、理学療法士や作業療法士、医師、看護師などがチームで対応します。

仕事や趣味を続けたい方、再発を防ぎたい方など、がんと向き合いながら前向きに生活するための大切なサポートです。

主に入院中に実施されるもので、外来通院で継続的にがんリハビリテーションを受けられる施設は少ないのが現状のようです。

心臓リハビリテーションとは

心臓リハビリテーションは、運動療法を軸としつつ、生活指導や服薬指導、栄養面のサポート、カウンセリングなど、多面的な医療サポートを行なうものです。

運動療法の恩恵は思いのほか多く、心臓、血管や筋肉、自律神経など健康維持に関わる多くの臓器や機能の改善効果が期待できます。

結果として、生活の質の改善、死亡率や心臓病のイベント発生率を減らす効果が示されていて、心筋梗塞や心不全治療ガイドラインにおいて心臓リハビリテーションは実施されるべき治療に位置づけられています。

がんリハビリテーションに比べて、心臓リハビリは外来通院でも取り入れる病院・クリニックが増えつつあります。

心臓リハビリテーションの運動療法は、準備運動、筋力トレーニング、有酸素運動、整理運動の流れで進められます。

特に、心臓に負担をかけすぎないように、運動中は血圧測定や心電図モニターによる監視が行われ、心臓にとって不利益が生じていないか医療スタッフが継続的に経過を観察し、安全な範囲で効果的なリハビリを提供できるのが特徴です。

※心臓リハビリテーションの詳細は下記動画をご参照下さい。

がんリハビリに心臓リハビリの要素を取り入れる

心臓リハビリテーションの考え方は、心臓そのものではなく、体全体の機能を良くしていこうという考え方です。

そのため、がん患者さんの体力維持・改善、生活の質の維持・改善にもいい影響を及ぼすと考えられます。

近年では、心臓疾患を併発したがん治療に心臓リハビリテーションの要素を取り入れる「腫瘍循環器リハビリテーション(CORE: Cardio-Oncology Rehabilitation)」という考え方も広まりつつあります。

心臓リハビリはどこで出来る?

日本心臓リハビリテーション学会のホームページに全国の心臓リハビリ実施施設が掲載されていますので、下記リンクよりご確認下さい。


大阪、天王寺、上本町近辺で心臓リハビリテーションをご希望の方は、夕陽ヶ丘ながいクリニックに一度ご相談下さい。